第14話 旧魔王城
彼女と一緒なら司書長はすんなり中へ通してくれた。図書館の中は清閑としていた。均等に並んだら本棚と細かい装飾の施された本達。二階にも本が並び中央には円柱状の本棚が設備されている。海外にある美しい図書館を見ているみたいだ。
デュランダルに関しての伝承や伝記を探そうとしたら、リナがすぐに見付けて持ってきてくれた。さらに、聖剣の成り立ちや功績、歴史書までも探して机の上に並べていく。ここは彼女の庭らしく、どこに何があるかは熟知しているらしい。
本の内容をリナに音読してもらい直人が気になる所で止めて、綴りを確認する。写したコードと照らし合わせて、全体を確認していった。
「うーん、大体の構造は分かったかな。基本的な剣のスペック、属性、効果、使用者への強化、付与って所だな」
直人は机に膝をつけて椅子ごと後ろに体を倒す。不安定な角度を保ちつつ、天井を見ていると司書長にはしたないと叱責される。慌てて姿勢を正す直人。
「魔王って聖剣によって倒されたんだよな?」
「そうですわ」
「その時の伝記ってあるのか?」
リナが魔王討伐伝の本もすぐに持ってきてくれて、内容を音読してもらう。
「魔王の技をデュランダルが打ち消した。それってどんな技かは書いてないか?」
「そこまでは……」
「だよな……ん~」
直人は一つの記述が気になった。魔王の技を打ち消したのなら、それもプログラムされているはずだ。
「聖剣は魔王を倒すための剣だ。そのための筋書きが予めプログラムされているなら、相手の技に打ち勝つための仕掛けも組み込んでいるはず。それが最後の記述の鍵になるはずだ」
文字が化けてほとんどのスペルが不明な箇所がそれで埋まるかもしれない。問題は詳しい技名が分からないことだ。
「魔王がいた城ってまだあるのか?」
「旧魔王城ですか?」
「存在はしていますわ。誰も近付きませんが……」
「なら、まだあるかもしれないな。『魔王』の秘石もそこに……」
モニカとリナは顔を見合わせる。直人の腹の中が読めずにリナが問い掛けた。
「何を考えていますの?ナオト」
「旧魔王城に行って、魔王の秘石の『プログラム』を見てみたいんだ」
「正気ですか?」
「魔王の使っていた『技』とか『詳しいコード』を見れれば、全てのピースが埋まるんだよ」
「旧魔王城には、今は魔獣はいないとされていますが……」
「行っちゃダメなのか?」
「はっきりと禁止されてはいませんが、好んで行く者もいませんわ」
「どうしても見てみたいんだ」
直人の強い言葉にリナは渋い顔をしながらも、王に許可を取りにいった。
二日後に直人、モニカ、リナの3人で旧魔王城へ向けて出発することにした。今は魔族の影響力は衰退したとはいえ、かつては魔王が治めていた城。そこに3人だけで向かうのには不安があったが、正直な話、国の防衛に奔走している騎士を同行させるのは、彼らを逼迫させてしまう。なので、王が兵を手配しようとしたのをリナが辞退したのだった。
かくして、少人数で旧魔王城へ出立することになった直人達。用意された馬と荷台に乗ろうとした時、喧しい声が飛び込んで来た。
「まてまてまてぇ~い!」
でかい声と共に誰かが駆けてきた。柵に足をかけてそのまま直人達を飛び越えて地面に着地する。背中に大剣を抱えた男が立ち上がって振り返る。
「聖剣復活のために旧魔王城へ向かうと聞いたぁ!ならば、この『勇者』ケイス・ワイルドが護衛を務めよう!」
溌剌とした顔の男が張りのある声で同行を願い出てきた。赤髪に筋骨隆々の体。体格はがっしりしているのに顔付きは丸かった。どこかで見たことあるな?こいつ。
「ああ!あの時の暴漢!」
騎士団本部にいた時に急に首絞めをしてきた男だった。ケイスは直人の姿を見るとすぐに距離を詰めてきた。
「いや、あの時はすまなかった!お前に聖剣の修復を頼みたかったのだが、俺が頼まずとも王が命じてくれていたとは!やはり、素晴らしい慧眼をお持ちだ!」
「顔が近けぇよ!パーソナルスペースを保ってくれ!」
「パーソナルスペースとは何だぁ?」
「離れろといっているんだ!」
「はっはっはっ!悪かった!さあ、出発しようではないか!」
「待ちなさい!ケイス!あなたはこの件に任命されていないはずです!同行は許しません!」
ケイスの豪気なノリに流されそうになったが、リナがそれを引き止めた。
「お前たちだけでは道中が心配だ!『勇者』の俺が付いていこう!」
「あなたは『元』勇者です。今は
そういえば、さっきから彼は自分を『勇者』といっている。ということは、彼が廃業にされてしまった『元』勇者なのか。しばらく、ケイスとリナの口論が続いたが、それに終止符を打ったのは直人だった。
「連れてってもいいんじゃないか?ケイスを」
「何を言ってますの!勝手な!」
「確かに二人も魔術師がいるけど、何があるか分からないし、俺は
直人がケイスを同行させる真の目的は、ぶっちゃけ美女二人と3人旅はハードルが高いからだ。こういう陽キャは正直苦手だが、男性が一人いると安心する。
「おお!ナオトは心が広いな!さあ!俺が御者になるから皆乗ってくれ!」
ケイスの指示に従い直人とモニカは荷台に乗る。リナも渋い顔をしながらも、なし崩し的にケイスの同行を許した。
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