Program 03
第11話 王宮
武装の方の秘石も何とか完了した。騎士団に身を寄せてもう3週間になる。騎士の人達とも打ち解けてきて、モニカに取り継いでもらわなくとも、気軽に会話ができるようになってきた。スキルの秘石の写しをしている途中で、休憩のために秘石室を出た。すると、びっくりするくらいの大声が飛んでくる。
「おまえかぁぁぁぁぁっっっ!」
絶叫しながら男がこっちに向かってくる。鬼の形相で猛進してくる赤毛の男に恐怖して逃げ出そうとしたが、あっという間に距離を詰められて襟元を掴まれる。
「お前が秘石を直している男なのかっ!そうなんだなっ!」
服を掴まれて鍛え上げられた上腕二頭筋で持ち上げられる直人。足は地面から離れ、首を絞められた上に前後に揺らされ、抵抗も出来ずに意識が遠退く。
「ちょぉ……おろし……っ!」
「頼む!聖剣をぉっ!取り戻してくれぇぇ!」
男は必死に直人に懇願するが、直人の意識は途切れ泡を吹いて揺らされている。その様子を見たモニカが悲鳴を上げた。
「きゃあぁぁぁ!ナオトぉ!」
「はっ!おおおい!大丈夫かぁ!しっかりしろぉ!」
首絞めしていた本人も直人の異変に気づき、すぐに地面に下ろしたが完全に直人はダウンしてた。
目を覚ますと、モニカが心配そうな顔を覗かせる。直人はぼんやりしながら、ゆっくり起き上がった。
「大丈夫ですか?ナオト」
「ああ、幸い三途の川は見えなかったよ。たく、何なんだよ!あの暴漢は……」
「あ~、彼も悪気があった訳ではないので、許してあげて下さい」
ふと、さっきの男が側にいるのではないかと警戒したが、周囲の景色に戸惑う直人。自分が寝てるベッドは天蓋がついてるし、部屋の内装や調度品も細かい装飾が入った物で統一されている。街の部屋や騎士の部屋とも格段に違うと一瞬で理解した。
「ええっと、ここは……どこだ?」
「おっ……王宮です」
王宮?王宮って王様がいる所?えっ!
「えええぇぇぇぇっっ!」
心の叫びが声になっていた。急に王宮にしょっぴかれてしまい、混乱する直人。
「どどどどどっどうして!王宮に!まさか、秘石を勝手に直しているのがバレて連行されたのか!俺!処刑されるの!」
「落ち着いてください!ナオト!私も何も説明されないまま王の護衛官に連れてこられたんです。でも、裁かれるなら連れていかれる場所が違いますし、投獄されている訳ではありません」
確かにここは檻の中じゃない。でも、王宮に呼び出されるってただ事じゃないよな!
パニックから抜け出せない直人。秘石の修復をしている時に考えなかった訳じゃないが、直人達がやっていることは違法だ。誰かに認可されている事じゃないので、上に目をつけられたら10-0で敗訴するだろう。直人が目覚めた事に感づいたのか、ドアの外で侍していた護衛官が扉を開けて入ってくる。
「市井魔術師モニカ殿、ナオト殿。国王がお呼びです」
不安になりながらも護衛官に連れられ王の間へ向かう直人とモニカ。王宮の中は絢爛豪華だった。これはバロック建築かな?昔はまったアクションゲームに出てくるヴェルサイユ宮殿みたいだった。荘厳な扉が開き王の間に到着した。広間の左右に人が立ち並んでいる。たぶん、大臣とかかな?
前の護衛官が跪き、モニカも立て膝をついたので直人も真似して膝を折る。モニカと同じように右膝の上に両手を乗せていたが、モニカにそっと
「面を上げよ……」
やけに若い男性の声がした。直人は顔を上げて階段の上の玉座を見た。そこには超絶美男子が腰かけていた。
若ぁっ!しかも、イケメン!想像してた王様と全然違うっ!
直人のイメージでは王様とは髭の生えた恰幅のよい中年の男性だった。けど、目の前にいるのは金のサラサラヘアーを右に流し、引き締まった体の20代ぐらいの男性だった。これが本当に一国の王なの?
「えっ……あれが王様なの?」
「はい、現国王ジュリアス・スプリンガー様です」
「歳は……いくつ?」
「今年で齢21です」
まさかの年下か~い!なのになんなのこの貫禄と威厳は!これが王の神託を受けた人なのか。
「名をナオトといったかな?そなたが秘石を直し、スキルや魔術を復活させているのは本当か……」
「はっ……はい」
場の緊張感と王の澄んだ声に、直人の声は震えてしまう。その挙動が周りの者の不信感を増長させる。
「秘石とは誰にも開示されていない神秘の石だ。何故、そなたはそれを理解できる?」
「えっと、俺は元々……秘石の修復をする職業をしていたからです」
「そなたは確か
なんで王様は俺が
「えっと、この世界、いえ、前の国にいた時の職業が……秘石の文字を理解し扱う仕事だったんです」
さらに、訝しむ眼差しが強くなる。誰もが直人を刺すような目で見てくるので、直人の精神も持ちそうになかった。国王ジュリアスは組んでいた足をほどいて佇まいを正す。
「秘石を直せると言うそなたに一つ頼みたい事がある。聖剣デュランダルを復活することができるか?」
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