職業ガチャ失敗!?ゲームプログラマーが異世界転移したけど、魔術師にも騎士にも勇者にもなれずに無職(ニート)になったぁ!?

きくらげ

program 01

第1話 依頼


 渡会わたらい直人なおと

 25歳。独身男性。彼女なし。

 専門学校を卒業して、ゲームプログラマーとして就職。けど、3年で退社。現在はフリーランスとして働いている。

 主にウェブ運営のプログラミングを担当。月20万稼げればいい方。現在、都内で独り暮らし。実家は遠方。両親は健在。結婚した兄が一人。よくつるむ友人はいない。


 趣味はゲームとアニメ。オタクだけど、ゲームは仕事のためにやってるだけ。アニメは何となく見てる程度。これと言って夢中な訳じゃない。


 今まで大きな怪我や病気はなし。壮絶な過去もなし。

 そう、俺は『平凡』な男だ。




 直人は打ち込みの手を止めて、マグカップの中のコーヒーを飲む。依頼された新設のウェブページをデザインに添って組み上げていく。機能や仕上がりを確認して、確認依頼のメールを送る。革張りのワーキングチェアに背中を預けて、返事を待つ。

 しばらくすると、了承メールが返ってくる。感謝の意を示す『定型文』を確認して、仕事終わりを実感する。

 仕事にやりがいや誇りなんてものはない。もちろん、責任感はあるし、今まで納期を遅らせたことはない。けど、それだけだ。充実感や達成感はない。クライアントとやり取りをして、作業をして納品して終わり。


 そう、俺の日常は刺激もなく面白味もない。欠伸が出るほどつまらないんだ。


 直人は飲み終わったカップを流し台へ持っていくと、すぐに洗って茶渋を取った。潔癖症ではないが綺麗好きな方だ。ワンルームの部屋に戻ると、新しいメールが来ていた。


「また、このゲームの依頼か……」


 あるゲーム会社から来るデバック作業の依頼。3か月前からゲーム内のスキルや機能の修正依頼が週に2回は来ていた。プロフィールにゲームプログラムの経験ありとは記載していたが、本当に依頼が来るとは思っていなかった。外部依託するほど零細企業なのだろうか?社名も聞いたことないし……。


「えっーと、『活気エンリベンづけ』のマジックスキルが使えないか……」


 3か月間、このゲームのプログラム修正をしているが、これが何系のゲームなのかがよく分からない。魔術とか武器の効果の修正があるから何かしらのRPGなのだろうが、植物を育てたり、動物を飼ったりとかのスキルもある。オープンワールドで自活するゲームなのかもしれない。


 おまけにプログラミング言語も独特なものだった。ゲーム会社に勤めていた時に使っていたものと同じだが、所々『コード』がオリジナルだ。


 直人は以前に貰った言語データを開いて、エディタウインドウを開く。異常が出ているマジックスキルの部分の『コード』を確認して『異常』を見つける。文字化けと一部の行のスペルが抜けている。その部分を直してモーションの確認をして修復を確かめる。

 他のスキルの異常を直してから、完了メールを送る。『ありがとうございます』という返信がくる。妙に簡潔すぎる返信メールだ。常套文すら使ってなく、本当に妙な会社だ。


 現在、午後の四時だ。

 今抱えている仕事は片付けたので、本日の作業は終了することにした。背伸びをしながらすぐ後ろのベッドに飛び込む直人。


「二時間寝て、夕飯買いに行くか……」


 直人はスマホのアラームをセットしてから、ベッドに横になって目を瞑る。自堕落ではないが就業時間に縛られなくていいのは、フリーランスの良いところだ。

 直人が寝息を立てた所でパソコンにメールが届く。先程のゲーム会社からの新しい依頼が入る。


『やはり、あなたは優秀なプログラマーですね。そんなあなたにもう一つ、依頼があります。



この世界の『プログラム』を書き換えてください……』



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