ご注文は以上でよろしいですか? セットで私はいかがですか? 憧れの人にそう言われて付き合ったら幼馴染が闇堕ちして先輩がデレた。

あゆう

一章 セットで私はいかがですか?

第1話 セットで私はいかがですか?

 さて、突然だが、俺には学校の帰りにいつも寄るファーストフード店がある。部活で疲れた後に、空腹を訴える腹を満たす為の手段として、あの安さと早さは小遣いの少ない高校生にはとても重要だ。わかるだろ?

 更にレジの子が可愛い。これも重要だ。



 そして、俺の行きつけの店に三ヶ月くらい前から新しい女の子のバイトが入った。



 はっきり言ってめちゃくちゃタイプ。俺の好みど真ん中。

 ちなみにその子の見た目は、長い髪を一本でまとめ、瞳は大きく少しタレ目。そして胸はユニフォームを押し上げて大きさを主張している。名札には【澤盛さわもり】って書いてあり、一瞬【特盛】って読んでしまい、『まさにじゃねぇか!』って心の中でツッコんでしまった。



 そんな子に「セットにポテトはいかかですか?」「新発売のこちらはいかがですか?」って言われて買わないわけが無い。 おかげで俺の財布は常に氷河期。だけど後悔はしていない。するはずもない。……バイト探すか。

 ってそれは別にいい。なによりも、俺が「じゃあそれも」って言った時の柔らかな笑顔が可愛すぎるんだよ。ほんとに。

 んで、見た感じ多分歳上かな? 落ち着いてる感じするし。てか俺が歳上好きだし。なんなら友達と来た時にわざとらしく大きめの声で「俺、歳上好きなんだよね〜」って言ったくらいだ。


 そして今日も俺は学園生活を謳歌した後、目的のファーストフード店【エムドエヌド】に行く。

 ただ、いつもと違うのは時間が遅くなってしまったこと。帰りに本屋に寄ったら中学の時の友達に会って、つい話し込んでしまったからな。

 その後から買う本を吟味していたら、すっかり外が暗くなっていた。


「あ、やっべ」

 

 その子が出勤しているのかさえわからないのに急いで店に向かい、店内を覗く。するとカウンターの中に一人で立っている姿を見つけた。そんな人口の多い街でもないし、今の時間なら一人でも大丈夫なんだろう。

 俺は今がチャンスとばかりに軽く前髪を整えて店の中に入る。店内を軽く見渡すと、客は俺を含めて四人。おっさんとおじさんとOL。三人とも窓際の席で外を眺めながらボーッとしていた。



 まぁ俺には関係ない。今はまず注文だ。

 ってことで、いつも通りにカウンターの前まで行くと、笑顔で声をかけてくれた。うん。声も可愛い。

 では、日野ひの 杏太郎きょうたろう 十六歳。いざ参る!



「いらっしゃいませ。本日は店内でお召し上がりですか? お持ち帰りですか? ただいま、店内でお召し上がりですと、五パーセント割引になっておりますが?」


「持ち帰りで」


「そうですか……。かしこまりました。ではご注文をどうぞ」



 ん? 今まで『そうですか』なんて言われたことあったっけ? 記憶にないな。まぁ、気にしてもしょうがないか。そして意気込んだわりにはまともに話せず、定型文みたいな返事しか返せない。ちくしょう。



「クーポン使ってハムカツバーガー単品一個と、ポテトのギガサイズ一個」


「かしこまりました。では、ご注文を繰り返させていただきます。ハムカツバーガーを単品でお一つ。ポテトのギガサイズをお一つ。どちらもクーポン御利用。……ご注文は以上でよろしいですか?」


「はい」


 はい、これで会話終了。いや会話ですらない。俺のヘタレ。ヘタレThe俺。後は金払っておしまい。

 現実なんてそんなもんだよな。

 あ、そういえば今日はセットとか新商品を勧められなかったな。

 まぁいっか。


「……セットで私はいかがですか?」


「あ、じゃあそれも」



 なんだ。しっかり勧められたわ。まぁ、買うけどさ…………って、ちょっと待て。



 今なんて?




 

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