第3話 アブノーマルで何が悪い! ACT 3
「いつまでそうしてるの? いい加減起きたら」
「いつつつ。効いたなぁ。ドアアッパーを食らうとは。なぁ、りんご。俺の顔傷ついてねぇか」
「ふん、男なんだから、顔に傷くらいあったって構わないでしょ」
「いやいや、そりゃぁまずいでしょ。なにせ第一印象が命だから。そうですよね奈々枝さん。それにしても、相変わらずお若くてお美しい」
「あら、あららら。もう、みかん君ったら、口もうまくなちゃって、このぉ―、相当女泣かせてきたみたいね」
「いやぁ―……。それほどでもないですよ。あははは」
「ところでいつまで玄関先でこんなことしてるの?」
「あら、そうよね。さ、入って入って、みかん君」
「あ、すんません。それじゃお邪魔します」
「何言ってるのよ。お邪魔しますなんて。今日からここがあなたのお家になるんじゃない」
「へっ!」
今日からあなたのお家になる?
ど、どう言う事よ!!!
「さ、遠慮はいらないわよ。女二人暮らしの愛の巣へどうぞ」
ちょっとまったぁ―――――!
「どう言う事よ」
「あら、言っていなかった? 今日からみかん君も一緒に暮らすのよ。ほら、おねぇさんからこんなに夏みかん送られてきてるんだから」
でーんと箱積された夏みかんが目に入った。
「あ、すんません、こんなもんしかなくて。お袋も、もっと気の利いたもん送ればいいんだろうけど」
「あら、うちは大歓迎よ。夏みかんも。そ・し・て。みかん君も」
「いやぁ、そう言ってもらえると助かります」
「どうして……?」
「荷物はお部屋に入れていたわよ」
「ホント助かります」
どうして……て、私の話も訊いてよ!
「そんじゃ、これからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ。ね、りんごちゃん」
はっ!
「もういい、私寝るから」
二人を押しのけるようにして、家にあがり、真っすぐ自分の部屋に入った。
ベッドのタオルケットを頭からすっぽりとかぶり。
ぶつぶつ。
嘘だ嘘だ、あのみかんがあんなイケメンになっているなんて。で、一緒に暮らすって私訊いてないよ。
いきなりそんなこと言われたって……。
私の脳裏に浮かび上がるみかんのあの腹筋。
ああああああ……。あれって卓也の腹筋に似てるかも……。
卓也って言うのは私が愛読しているBLマンガの主人公。
今井マル先生著。
女嫌いの主人公、卓也が同じ同性に興味を見始め、自分の想いを少しづつ開花させていく物語。
あのぎこちなくてツンデレな卓也の姿が物凄く可愛いい。何となく自分を見ているようで物凄く共感しちゃう。私女だけど!
でもって今井マル先生の別作。こちらは真逆のGL。
実は私、男駄目なんだよね。
さっきもあの二人ずれの男の一人に腕を掴まれて、物凄く気持ち悪かった。
現実の、実際の男は嫌い。
私の好きな男性は2次元の中にいる。
でも女同士なら大丈夫。て、言うか、マジ今付き合っているのは同性の女の子。
同じ学校の同じクラスの子。
私たちはいい友達であって、……恋人同士なんだ。私たちが付き合っていることはみんなには内緒だけど。
唯一私のすべてを許せる彼女。
彼女は私の可愛い子猫ちゃんなのだ。いや私が子猫ちゃんなんだろう。
もちろんこの果敢なお年頃の17歳。エッチなことには十分興味はあるのだ。
ただそれが普通は異性相手なのだが、同性相手に向けているところが私の現実の世界。
それでも2次元の世界では、十分に男性に恋い焦がれている。
つまり私は腐女子であって、同性愛者の……。なんと申しますか。
上原望曰く……。
『腐った果実』だそうな。
だから何が悪い。アブノーマルの何が悪い。
開き直ることに関してはお手の物な私。
いっそうの事、全てを解放して堂々と生きていければ……。
む、無理かもしれない。
なにせ、まじかにそう言う人物が存在しているからだ。
母上様。あなたのその性格がうらやましくも、妬ましい。
官能小説家であり、マンション経営に乗り出してこれまた満室状態。
「今度はラブホでもやってみようかな」なんてルンルンとして言うところは、ぱたんと本を閉じて、潰しておきたい。
――――にしてもだ、何故『みかん』と一緒に暮らすはめになったのか?
まずはそこが知りたい。大いに知りたい。
声を大きくして知りたい!!
幼い頃、数日一緒にいたことがあっただけ。7歳も年上なのに、弱虫で泣き虫。
一緒にお化け屋敷に入ってワンワンと、私にしがみついて泣きじゃくっていたのを今でも覚えている。
それがだ……あれだよ! 変われば変わるもんだ。
おっといけないそうだ、どうしてみかんがここで一緒に暮らすことになったかという事だった。
――――まさか。母上様の悪い癖? 原稿の資料? えっ、えっ、まさか嘘でしょ。仮にも甥っ子になるんだよ母上様。
いいのか?
いやいや、ありえねぇ……。でも否定も出来ないのがあの母上様だ。
それとも何か事情があるのか?
でも今さらのこのこと出て行く訳にも。……「ぎゅう」は、腹が鳴った。
そうだ晩御飯まだ食べていなかったんだ。
晩御飯……夕食。
「ぎゅううううう」
夕食は食べないと。そうだ、夕食だ。
行く口実は出来た。
よし飯、食べに行くぞ!
その時、部屋のドアがノックされた。
「りんご、俺だ。いるんだろ。入ってもいいか?」
えっ! 嘘。みかん……。
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