腐女子のりんごちゃん従兄のBL教師に恋をする。

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

アブノーマルで何が悪い!

第1話 アブノーマルで何が悪い! ACT 1

事件は突如にやって来た。

とある休みの日。

バイト帰りに私は馬鹿な男二人に絡まれた。


「俺たちと遊びに行かない?」

古典的なナンパ言葉にゾクッと鳥肌が立つ。

無視! 無視!


「なぁなぁ、俺たちすんげぇ面白い所知ってんだ。これから一緒に行かない?」


すげぇ面白いところ? あんたたちにとっては面白いところかもしれないけど、大方そのままラブホ直行パターンじゃないの?

私は面白くないんだけどなぁ。


無視! 無視!

無視し続ける私の腕を一人の男が掴んだ。

―――――ぞわ!!


気持ち悪い。男に触れられた。

振り払おうとしても、がっしりと握られたそいつの手は離れなかった。

「なぁ、そんなに嫌がらなくても何にもしねぇから。ただ楽しもうって言うだけなんだから」


「やめてください!」

思わず声が出てしまう。

「な、な、そんなに嫌わなくたって。ゼッったいにいい思いさせてやっからようぉ」

「まにあっています。手離してください」

ギッと睨むが、それがまた逆効果だという事をまだ知らなかった。

「いいねぇ――――! その怒った顔も。俺惚れちゃいそうだよ」

はぁ? 此奴変態か?


思わず此奴の股間に、足蹴りを一発けり込みたくなる。

ピン! そうか。うまくヒットさせれば、此奴は悶絶しながら私の手をはなすだろう。

一か八かやってみる価値はありそうだ。

と、頭の中ではカッコよく決めた私の姿が映し出されているが、実際はからだが言う事を利いてくれない。


それでもやってみなければ、いやいや、やらないといけないんだよ。でないとこの状況から逃げることなんて出来ないようだ……!


男の急所。男の股間……蹴り上げれば悶絶して……痛い! と叫ぶ。……はず。

私にはその痛さがどんなものかは分からないけど、相当痛くて苦しいという事は訊いている。

誰から? いやいや周知の噂だよ。


ここは躊躇するところじゃない。思いっきり行けぇ! 例えその機能がどうなろうとも私の知ったこっちゃない。

片足をじりッと後ろに……い、いまだ!

思いっきり男の股間めがけて足をけり上げる。


「おっと! アブねぇ」

その男は私の腕を掴んだまま、ひょいと体をひるがえして私の足蹴りをかわした。

「元気だねぇ。いいよ君。こういう元気な子俺ホント好きだわぁ。しかも自らパンツまで見せてくれるなんて、いい子だよほんと君は」

や、やばい! 失敗した。

同じ手はもう効かないだろう。


此奴、しっかりパンツまで見てやがるし……。まぁ見えたのはもう仕方がない。

でもいい加減この手は放してもらいたい。

もう限界だ!

男にこうして触れられるのはもう限界なのだ。


鳥肌が次第にかゆくなる。

蕁麻疹か?

からだに力が入らなくなってくる。ま、まずい……。このままでは私、此奴らにこの躰好きなように弄ばれてしまう。

ああああああ……。意識も次第に落ちていくような感じが……。

すぅ――――っと落ちていく感覚。なんだかもう、どうでも良くなってなぜか心地いいとまで思うようになった。


はっ、やられるな。

この二人に私は弄ばれるんだ。

―――――もう駄目だ。

あははは、どうしよう。私ってこんなことでもう終わちゃうのかなぁ。

て……。


「もういいかなぁ」

へっ?


「いやぁちょうどここ通りかかったら、なんか見るに絶えない光景が目にはいっちまったもんで……つい、おせっかいを」

「なんだお前?」

「ですから、ただの通りすがりですよ」


「だったらお前には関係ねぇだろ」

「いやいや、さっきから見ていたんですけど、どう見たって彼女嫌がってるでしょ」

うんうん。嫌だよう!!

「なんだぁ、お前。なんか勘違いしてねぇか? 俺たちはただ一緒に遊ばねぇかって誘っているだけじゃねぇか。それのどこがわりーって言うんだ」


「だからさぁ、嫌がっているのを無理やり誘うのって、まずいんじゃねぇのかって言ってんだよ」

次第にドスの効いた声に変わってくる。


「何因縁つけてんだ此奴」

あ! やったぁ。ようやく掴まれていた手が離れた。

じりッと前に出る彼が私の耳元で

「ほら、早くお逃げ子猫ちゃん」

ふわっといい香りが、私の洟をくすぐった。


た、助かった……。

言われるまま、私は逃げるようにその場を後に……。

ドスッ! ドサ! うううううううううううううっ。

あっ! やられた。


マジですか?


私このまま逃げてもいいのかなぁ。

「なんだでんでよぇ―じゃんかよぉ! カッコばかりつけてんじゃねぇよ」

ドスッ! とまた彼のお腹に拳が入る。

「うぐぅううううううううううう」

あっ! またやられた。

ちょっとまずいよねぇ……。

「おらぁおらぁ、どうした。カッコばかりつけてんじゃねぇよ」

「いやぁ、痛いですよぉ。お腹にずぅ――んと来ますねぇ。結構効いてるんですよぉ」

「へっ! あったりめぇだろ。俺ボクシングやってるからな」

「へぇ―、ボクシングやってるんですかぁ……通りで、入り具合がいい。でもなぁ、ボディーブローて言うのは、こうすんだ!!」


「あ! お回りさぁん!! こっちこっち。喧嘩しています!!」


彼がゆっくりと立ち上がり、拳を構えて彼奴のお腹に一撃を与えようとした躰がピタリと止まった。

「や、ヤベェ……」


身構える男に彼はスッと近づいて

「今度はリングの上で絡んでもらえると嬉しいな」


「へっ?」きょとんとする男。

「それじゃまた」

にっこりとほほ笑んで、ダッシュでかけ出したと思ったら、今度は私の手を掴み。

「ほら、逃げるぞ」

「えっ! あ、はへっ」

無理やり引っ張られてあの男達から遠ざかる。


あのぉ……私助けられたの?


それともまたどこかに連れ出されるの?


どうなの?

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