第2話
「ふーん」
どこか感心したように声を漏らした俺は首を左右に振りながら周りを見回す。
昔の西洋の街並みをインスパイアした感じの風景になっており子供の頃にプレイしたゲームの記憶と照らし合わせると【ザ・冒険者の町】だった。
俺が最初に降り立った場所には大きめの噴水が設置されており首都圏にある某犬の銅像のようなちょっとした待ち合わせスポット的な様相を呈していた。
石レンガの街並みはどこか
行きかう人々にもどこか活気に満ち溢れ近くの店からは客引きのための声が飛び交っている。
そんな場所で俺は一体何をしているんだというどこか場違いな感情が頭をよぎるがそれよりも確認しなくてはならないことがあるため早速それを実行することにする。
「メニュー」
そう、それは俺の今のステータス情報だ。
所持品やパラメーターなどの各種項目を確認することが今の俺に与えられた使命だ。
ってかそんな堅苦しくしなくてもいいか?
メニュー画面から各種項目を選び現在の俺の状況を確認していくと以下の通りだった。
【プレイヤー名】ジューゴ・フォレスト
【取得職業】 剣士レベル1 鍛冶職人レベル1 料理人レベル1
【各パラメーター】
HP (体力) 88
MP (魔力) 70
STR (力) 10(+30)
VIT (物理防御) 12(+55)
AGI (俊敏性) 9(+15)
DEX (命中) 8(+16)
INT (賢さ) 10
MND (精神力) 10
LUK (運) 20
スキル:なし
うーん、よくわからんな。 それが正直な感想だった。
まあスタートしたばかりだから強くはないということは俺でもわかるがゲーム自体が久しぶりなところもあって少し困惑気味だ。とりあえず名前と職業は見ての通りだからパラメーターを見ていこう。
とりあえずHPとMPは説明は不要だろうが一応言うと、HPが0になれば死にMPが0になると魔法などが使えなくなる。
STRはそのままで力だからこれが高いと武器の攻撃力が上がり与えるダメージが増える。
VITは物理防御だから敵の攻撃で受けるダメージを軽減するかな。
AGIは俊敏性だから敵の隙をついたり相手の攻撃を回避する能力だろう。
DEXはそのまま命中率でINTも同じく賢さで間違いない。
MNDは精神力ということなので敵の魔法に対する抵抗力みたいなものかな。
最後にLUKは運という事だがこれがなぜか能力値が抜きん出て高いようだ。
「装備はどうなってるかな?」
今装備している装備品を確認するとその内容に少し戸惑った。
【装備品】
シルバーソード
布の服
シルバープレート
シルバーベルト
革のズボン
シルバーレギンス
「エッ? ナンデスカコレハ?」
思わず棒読みになってしまうほどに装備の内容がおかしかった。
布の服と革のズボンは初心者だからいいとしてそれ以外の装備が明らかに初期装備のそれではない。
いくら俺が久しぶりにゲームをプレイする人間だからと言って銀系の装備が初期武器であることは異常だと分からないほどではない。
初手からシルバーとかどんなチートですかと心の中で突っ込んでいると突然ピコンという可愛らしい効果音が鳴り響く。
「ん?これは……」
それはメッセージを受信したという知らせのようでこの【フリーダムアドベンチャー・オンライン】呼ぶのが長いのでこれからは“FAO”と略そう、でそのFAOにはプレイヤーや運営と個別に連絡が取れるメールのような機能があるらしく差出人は先ほど初期設定を手伝ってくれたナビゲーターさんからの物だった。
【先ほどお伝えし忘れたことがありましたのでこうしてメールをお出ししました。実はジューゴ様がこのゲームにログインした時点で丁度77777人目のプレイヤーだったのです。それを記念いたしましてジューゴ様にだけ特別に初期武器としてシルバーシリーズの装備を贈呈致します。このシルバーシリーズは次々回アップデート予定の街周辺の鉱山でしか入手できない銀鉱石で精錬した銀インゴットを使用して作られた場合のみでしか生産できないため、現在はあなた様しかそのシリーズを所持しておりません。初期武器としては些か過剰戦力になってしまうかも知れませんが、快適なプレイをお楽しみいただけることと思います。以上を持ちまして私の用件は終わりです。是非とも【フリーダムアドベンチャー・オンライン】をお楽しみくださいませ。
P.S. 次々回アップデート情報に関してはまだ未発表ですので他の方には黙っててくださいね。テヘペロ♪】
「テヘペロじゃねえよ、ボケエエエエ!!」
と思わず大きな声で突っ込んでしまったため他のプレイヤーに変な目で見られたが今はそんなことを気にしている場合ではない。
そう思い恐る恐る記念に贈呈されたシルバーシリーズとやらの性能を一つ一つ確認していくことにした。
【シルバーソード】
鉱山で採掘される『銀鉱石』で精錬した『銀インゴット』から作られる剣。
アイアンシリーズよりもさらに汎用性と耐久性に富んだ一品
攻撃+30
というような詳細な説明が表記されており他のシルバー装備は同じ説明が並んでいたため割愛するが
それぞれプレートが防御+25、ベルトが防御+13と命中+16、レギンスが防御+17と俊敏性+15というようになっておりとんでもないことになっていた。
もはや過剰戦力どころの話ではなく、圧倒的な力を手に入れてしまったことに固まっていたが何とか思考を再起動させた時に今になって気付いたことがあった。
それは自分の装備している見た目が明らかに通りを歩く冒険者たちと一線を画すものだった。
中に着込んでいる布の服と革のズボンは同じものなのだが、
「これじゃあ目立ってまったりのほほんプレイどころじゃないぞ。 何か他に装備は無いのか?」
そう思って所持品を確認するも残念ながらそれ以外の装備はなく、素材を集めて新しく生産するか
既製品で販売されている装備を買うしかなかった。
そうこうしている間も通りを歩く他のプレイヤーからは怪訝な目で見られ続けていた。
他のプレイヤーが革装備一式で全身茶色で統一されているのに一人だけ全身輝くシルバーでいたら
そりゃ目立つに決まっている。
「くそ、どうするか?」
「おい、そこのアンタ」
「早いとこ誰かに絡まれんうちにここから」
「おい、アンタだよアンタ、そこのシルバーを着た兄ちゃん」
「うっ、まさか俺のことか?」
そう言って振り返るとそこには褐色の肌をした妙齢の女性が立っていた。
短く切られた赤い髪はボサボサで艶気はないが、褐色の肌に艶めかしい肢体を持ち胸部分の革製の鎧を押し上げる膨らみはこれでもかというほど自己を主張していた。
顔立ちは端正で整っており綺麗なターコイズブルーの瞳を持った活発な印象を受ける女性だ。
「兄ちゃん、他の連中と違う装備してるけどどこで手に入れたんだ?」
「うっ」
デスヨネー、気になっちゃうよねーやっぱ。
だがそれを言うと反感を買ってしまうのは目に見えていた。
今質問している女性と同じ疑問を持ったプレイヤーが立ち止まり俺の返答を待っている。
こういうゲームは情報も大事になってくるためこういった細かい情報も馬鹿にできないのだろう。
だが正直に答えるわけにはいかない俺の望むまったりのほほんプレイのためにも。
「まあちょっとな」
「ちょっとなって、どこで手に入れたんだい教えておくれよ」
「ひっ秘密だ! それじゃ俺これから用があるから!!」
「あっちょちょっとぉ!!」
そう言いながら俺は彼女に背を向けると全力で走り出した。
今思うとこれが災難の始まりだったのかもしれない。
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