(三)-9

 次に会う約束をする口実に電話をかけてきたならわかるが、それもなかった。その上、念を押したように「伝えたから」と言って電話を切ったことも怪しい。

 そもそもこの情報は私が知らなくてもよいものだ。それなのになぜ、わざわざ私に伝えたのであろうか。

 もしかすると、まさかではあるが、正義が比寄組の組長なのではないのか。万が一とはいえ、可能性は、実はあり得るのではないか。

 法子はそう思い至ると、もう一度電話を取り出して父を呼び出した。

「今度の日曜に、腕が立つのを何人か貸してくれない? 確かめたいことがあるの。」

 法子は窓の外に見える皇居の桜田門の前にある建物を見つめながらそう言った。


(続く)

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