表の顔と裏の顔

【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名

(一)

「宮浜龍太が仮出所した」

 崎玉県警川居警察署捜査一係の白沢正義は、県警本部に勤める先輩である今和泉信太から電話で短く、そう告げられた。

 宮浜龍太というのは、川居署管内に拠点を置く比寄組の一員だった人物だ。以前起きた組長交代劇のゴタゴタの際に逮捕され、実刑判決を受けて服役中だった。それが今回仮出所となった。前組長に心酔し、組長の懐刀として、鉄砲玉として組を支えた人物だった。

 さらに今和泉先輩は「比寄組のボスであるお前を殺しに来るはずだ」と続けた。

「それを知っているのは私と先輩だけですよ」

 白沢はそう言って電話を切った。


(続く)

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