第2話 目覚めの時
どれくらいの時が流れて行ったのだろうか。
ルシファーは深い闇の中、失意の底にいた。「私は何を考えればいいのだろう…。何を考えれば…。エヴァ、君の優しい笑顔、君の長い髪が私の頬をそっと撫でてくれる…。会いたい、エヴァ…。」
ルシファーはゆっくり目を閉じて又深い眠りに着いた。
空では飛行機の爆音、地上では車の騒音と目まぐるしく時代は変わって行った。
「さっさと終わらせろ~!もうすぐ昼飯のお時間だぞ~!」
此処は街のど真ん中、ビル建設の騒音で人の怒声もかき消されるほど機械音が響いている。
「何やってるんだ!ボケ-っとしてないでさっさと手を動かせ!」
クレーンを操縦していた男が深く掘り起こした穴をじっと見ている
「ボス…人が死んでいる」
ぼそりと言ったが当然ボスには聞こえない。
「其処が最後の杭射ちになるんだぞー!」
「やっぱり人だ…!」
じっと地下深くを見詰めていたが
「人がっ!人が死んでるー!」と
何度も繰り返し叫んだ。やっとボスの耳に届いたが、ボスは白けた様子で
「人だとよ、人が死んでるんだと!あのボケ昼メシ食ったらケツを蹴り飛ばしてやる!」
「そん時は俺も手伝うぜ」
皆で笑っていたが、あまりに手招きを必死でしているのに見かねて、ボスは深くため息をすると、
「ちょっと行って来る」
と言いながら面倒臭げな足取りで向かい、作業員が指差している方を目を凝らして見てみた。
「ん?なんだ?あれは?…人、か?…。」
ボスは暫く見ていたが、どうも人間らしい事に気がつき、
「人間だ!人が死んでるぞー!」
大声で叫んだ。
「警察を呼べ!警察だー!」
ボスの声に仲間も駆けつけ、ボスはとっさに地下へ滑り降りた。
身長は180センチ位だろうか、栗色の髪は土の色と混じり白い顔のほとんどが土で覆われている。
「なんだあ?此の服、古代人か?」
「バカ言うなよ、此の格好はほら、よく若者がやる何だっけ?」
「コスプレ?だろ」
「そうそう、そのコスプレの格好してるんだ」
周りの憶測が飛び交う。
「だが不思議だと思わないか、誰がこんな深くに人を埋めるんだよ」
ボスは訝しげに首を傾げた。
「兎に角、警察が来るのを待とう」
そう言って引き上げようとしたとき、
「う、う~ん」
微かな声に皆の足が止まった。ボスが
「お前、何か言ったか?」
隣にいた作業員が首を横に振った
「う…う~ん」
立ち去ろうとしていた皆が固まった。
「えっ?」
「ま、まさか…生きてる?」
「そんなバカな!」
ボスは振り返り男の前で膝まずくと顔の泥を払いのけ、頭を起こした。
「おい!生きてるのか?しっかりしろ!」
「痛て、痛ててて。痛て-んだよ…。」
そう弱々しく言うと、小さく息を吸ってペキは気を失った。
「直ぐ救急車を呼ぶからな!頑張れ!早く救急車を呼ぶんだ!早くしろ!」
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