(二)-17

「そういうのはきちんとした方がいいだろ。今日は指輪を持ってきてないし」

「今ほしい」

「指輪を?」

「もちろんプロポーズを」

「指輪があったほうがいいだろ」

「指輪はいらない。きちんと言葉にして欲しい。それだけでいいの」

 滝沢は、私の体に巻き付けていた腕を戻し、直立した姿勢で、私の目をジッと見た。

「温子、結婚してくれ」

「本当にそう思っている?」

 私はわざと顔をうつむき加減にして滝沢の顔を上目遣いで見た。

 滝沢は「もちろんだよ」と言って私を抱き寄せた。


(続く)

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