第7話 魔王ちゃんのスキル

「行っていい!?」


 やる気満々のブレサル。


「う〜ん、ブレサルは……」


 対して、佐藤は乗り気じゃない。


「この前いいって言ったじゃん!」

「お父さんの嘘つき!」


「ブレサル、そんな言い方しちゃダメよ」

「気持ちはわかるけど、お父さんだって……」


「もういい!」


「「あ!」」


 ブレサルはシャロールの言葉を最後まで聞かずに家を飛び出していった。


「魔王、ブレサルについて行ってくれないか?」


 ブレサルを追いかけずに、魔王に頼む佐藤。


「私か?」


「僕達が追いかけても、あいつは怒ると思うしさ……」


 確かにそうだな。


「お願い!」


「ううむ……」


 魔王は即決できずに悩んでいる。


「なんか……好きなお菓子買ってあげるから!」


 お菓子。

 そんなもので魔王が……。


「ホントか!?」


 めっちゃ嬉しそう。


「うん! ご褒美だよ!」


「それなら、行ってくる!」


 魔王も急いで家を出た。


「あいつも子供だよな〜」


「ねぇ〜」


――――――――――――――――――――


「おい、小僧!」


「あ、魔王さん!」


 ギルドで再会を果たす二人。


「私もついていくぞ!」


「ええ!?」


「なぜ驚く」


 そりゃ驚くだろ。


「だって、魔王さん、冒険者登録したの?」


 そもそも冒険者になれるの?


「なんだそれは」


 知らないんかい!


「してないなら、行けないよ〜」


「私はついていきたいぞ」


 諦めない魔王。

 たぶんお菓子のこと考えてる。


「それなら、今したら?」


「そうか、今できるのか」


「アソコでできるよ」


 受付を指差すブレサル。


「うむ、わかった」


 魔王は受付に進む。


「冒険者登録をしたいのだが」


「あぁ、わかりました」


 受付のお姉さんは、少し驚いている。

 魔王の頭に角が生えているからかな?


「こちらに名前を……」


「そういえば、名前はなんて言うんだ?」


 ブレサルが隣で尋ねた。

 そうか、ブレサルは知らないのか。


「コデヒューズだ」


「ふ〜ん」

「俺はブレサルだ!」


 なんて話してたら、次のステップ。


「次にこちらに来てください」


 奥へと進む。

 なぜかブレサルもついてくる。


「スキルがわかるんだぞ!」


「こちらの鏡の前に立ってください」


「ふむ」


 魔王らしく堂々と鏡の前に立つ。


「ワクワク」


「あなたのスキルは……」


 鏡の文字は……。


「絶対的王者だな」


「な、なんですかこれ?」


 慌てる職員。


「ちょっとギルドマスター呼んできます!」


 なんだかデジャヴな展開。

 しばらくして、彼が現れる。


「ふ〜ん、魔王はすごいな」

「さすが魔王といった感じだな」


「お父さん!」


「佐藤か」


「ついてこないでよ!」


 突き放すように、ブレサルが叫ぶ。

 ちょっとかわいそうな佐藤。


「これは仕事なんだが……」

「まあ、もう向こうに行くよ」


「フン!」


 まだまだ仲直りには遠いようだ。


「あとはよろしくな、魔王ちゃん!」


「うむ」


――――――――――――――――――――


「ヒールグラスはここらへんに……」


 佐藤とシャロールも昔やった、薬草採取の依頼だね。

 二人の協力が大事になるんだよね〜。


「あれでしょ!」


「はい、そうですね」


「僕が取ってくるから、魔王ちゃんは探してね!」


「ほう」

「それじゃあ、まずはあそこの……」


――――――――――――――――――――


「ふぅ、疲れてきたな……」


 魔王に疲労の色が見え始めた頃。


「魔王ちゃん、次は!?」


「えーと、次は右に行って……む?」


「右に行って……うわ!」


 なんとブレサルの目の前にはスライムが。それも、紫色のいかにもヤバそうなやつだ。


「危ない!」


 職員も気を抜いていて、気づいた頃にはもう飛びかかっていた。

 ブレサル、ここで死ぬのか!?


「頭が高い!」


 おりょ?

 魔王の一声でスライムの動きが止まる。


「私の友人に、手出しするなど言語道断!」

「己の身分を、わきまえぬなど無礼千万!」


 すると、スライムは縮こまった。


「ま、魔王ちゃん……すげー……」


 確かに絶対的王者だな。


「さ、続きをやるぞ。ブレサル」


「お、おう!」


「ついでに、お主も手伝ってくれ」


 スライムがモニョモニョしている。

 怯えてない?


 ま、いっか。

 ブレサルが無事だったから。

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