第10話 豆狸、新しい小さな宿屋に満足する

そして春……

若夫婦に変化がおとずれました。奥さんに赤ちゃんが出来たのです。



豆狸まめだ達にも変化がありました。

以前、太り過ぎてしまった為…気を使ったご主人が、毎回くだものを用意してくれたので、ずいぶん身体が軽くなりました。



たまに少し遠出をして、山の方にエサを探しに行ってみたりしたのも良かったようです。



今日は宿屋もお店もお休みなので、豆狸まめだ達は裏庭で日向ぼっこをしています。

すると、お店の方にお客が来た様です。



「急な事ですみませんね棟梁とうりょう。 」


「ああ…こりゃあちょっとドアの建て付けが悪くなってるな。

何、すぐ直る。」


「良かった。」



どうやら、お店の入り口の修理しゅうりに大工の棟梁とうりょうが来たようです。



トンカントンカン音がして、しばらくすると静かになり修理しゅうりが終わりました。



「ありがとうございます棟梁とうりょう

そうだ!美味しいデザートがあるんですよ。」


「そりゃ楽しみだな。」


「ここで休んでいてください。

直ぐに持って行きますから。」



そう言ってご主人は、棟梁とうりょうをサンルームに案内して台所の方に行ったようです。

棟梁とうりょうが待っていると、庭先でくつろいでいる狸が見えました。



「おっ!ここの庭、狸が来てるのか?」



するといつの間にか、お茶の支度したくを済ませたご主人が、戻って来て答えます。



「えぇ…去年の春ぐらいから1匹来始めて、秋にもう1匹増えたんです。

それからありがたい事に、お客様が増えだしまして…… 」


「ハッハそりゃもしかしたら、本当にこの狸のおかげかもな!?

もしかしたら、豆狸まめだかもしれんぞ?」


「そうかもしれませんね。

子供が産まれたら、『これからもペンションが上手くいくように、【満月屋】さんの【豆狸まめだほこら】に三人でお参りしに行こうか?』って話してたところなんですよ。」



しかしご主人の話しに、棟梁とうりょうはとても残念そうに言いました。



「あの【豆狸まめだほこら】なら、もう無いぞ。

去年の秋に代替りした今の当主が、罰当たりにも勝手に壊してしまったんだ。」


「えぇっ!?そんな事して大丈夫だったんですか?」


「それが、大丈夫じゃなかったみたいでなぁ。

このところ商売が、上手くいってないらしい。

それに比べて、ここの繁盛ぶりと狸……

まるで昔話の【豆狸の宿】みたいだな。」


「あはは、まさか~ただの偶然ですよ。」


「そうとも限らんぞ!

いっそのことここに、新しい【豆狸まめだほこら】を建てるってのはどうだ?

こう見えて、宮大工も兼ねてるんだ!

【満月屋】の隣りの寺の和尚も、残念がってたし、善は急げだ!」


「えっ!?でもいいんですか?

そんな勝手に??」



とご主人はびっくりしています。



「まぁ、任せておけって!!」



そう言って、気を良くした棟梁とうりょうはご主人が出したデザートを食べると、あっという間に帰って行きました。



豆狸まめだは、ご主人と棟梁とうりょうの話をしっかり聞いていました。



『あの宿、ワシが出て行ってから、そんな事になっとったのか……

それにしても、新しいほこらかぁ~楽しみじゃのぅ。』



それから数ヶ月経ったの夏の初め……

小さな宿屋….ペンション【ストロベリームーン】に新しい家族が増えました。



ご主人は奥さんと赤ちゃんと一緒に棟梁とうりょうに建ててもらった【豆狸まめだほこら】の前で記念写真を撮りお店に飾ったのです。



その写真には、よく見るとちゃっかり豆狸まめだ達も写っています。



新しいほこらを見て、豆狸まめだは……



『こんなに立派なほこらを建ててくれるとは、ありがたいのぅ。

秋になったらお礼に、また何か良い物をて採って来てやろう。』



そう言って巣穴に入って行きました。




その後もペンションは繁盛し、記念写真は家族の宝物になりました。




              おしまい









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