技術論(書く前に)

文章の読み手はだれか

 ここからは、実際に文章を書くうえでのポイントを書いていく。

 まずは、前提の話から。



一、世代によって文体は変わっていく


 好きなジャンルは人それぞれなので、そのジャンルを読んでくれそうな人にアプローチをかける。

 これを理解している者は多いが、「ジャンル」を「文体」に置き換えても、同じ話になることに気づいていない者が多い。


 受けた教育や読んだ本により、受け入れられない文体が生じる。

 それは同世代の間でも起きるが、顕著なのは、世代の離れた者の書いた作品においてである。

 若い人の書いた小説を読んで、内容以前に文体が受け入れられない中高年がおり、また、逆のパターンも存在する。

 ここで大事なのは、この世代間の問題は、若い人の文体が未成熟であることが原因ではないことだ。

 文体が時代とともに移り変わっていくためである。


 ためしに中高年は、戦前の作品を読んでみるといい。

 古典と呼ばれている作品の中には、文体が古びておらず、読むに耐える作品もある。

 しかし、その大半は、内容以前に文体のせいで楽しめないはずだ。

 中には、日本語で書かれているのに、外国語のように感じる文章もあるだろう。

 中高年はそれと同じ反応を、自分の書いた文章に対して、若い人たちが抱いているかもしれないことを自覚するべきだ。

 カクヨムにはいないだろうが、「小生」や「貴兄」のような人称をつかう者の文章を、若い人は読まない。


 異世界転生物を書いて、多くの人に読んでもらいたいと思えば、主要な読み手は若い人たちである。

 彼らに読んでもらいたいと思えば、人気のある作品の文体を参考にして書かなければ、内容以前の段階で読んでもらえない。



二、読み手を意識する


 世代やジャンルによって、好ましい文体は異なる。

 これに対応する方法は三つある。


 ①読み手に合わせた文体にする

  この調整には限界があり、手間もかかるが、文章の勉強になる。


 ②自分の文体を受け入れてくれる読み手を探す

  スタイルを変えたくなければ、これでいく。主要なターゲットは同世代だ。


 ③時代を超えたスタンダードな文体を目指す

  努力だけではなく、才能もいる選択。古典・名作を読み込み、習得する。



 内容が読み手にマッチしていても、文体が合っていなければ読んでもらえない。

 その点にも注意を払うべきだ。



⇒次回は「目指すべき文章」

 異なる読み手を想定した場合でも、目指すべき文章の根本は同じである。

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