第6話




「そうか。そんなすごい夫人がいるのか……」


 事情を聞いたロッドは神妙な顔で悩み始めました。


「大丈夫なのか? 格上の貴族からの申し出って断れないんじゃあ……」

「ううん! 公爵夫人の言っていることは明らかにおかしいから! 皆、断っているからそれは大丈夫なんだけど、ただ今回はやけにしつこくて……」

「やっぱり、俺が平民だからか」


 ロッドが顔を曇らせてしまいました。


「私は絶対にロッドと結婚したいのだから、そんな顔しないで!」

「あ、ああ。いや、俺は平民だからセラが困っていても助けにいけないだろ? それが歯がゆくてさ」


 平民のロッドは社交の場には入れませんから、私を心配してくれているようです。


「明日の夜会で、もう一度はっきり言うわ。私はロッドと結婚する以外に考えられないって」

「セラ……」


 ロッドが手を握ってくれました。どきどきしますわ。


「セラ。渡したい物があるんだ」


 ロッドは懐から小さな箱を取り出して私に差し出しました。

 受け取って蓋を開けると、銀の葉に葡萄色の石が房のように連なっている髪飾りが入っていました。


「貴族だと、婚約者に夜会のドレスとかアクセサリーを贈るんだろ? 俺はドレスなんて贈れないし、これだって貴族がつけるような立派なものじゃないけど」


 ロッドは照れながら頬を掻いて言いました。

 私は感激で声もなく髪飾りをみつめました。


「ロッド……っ! 嬉しいわっ」


 値段なんて関係ないのです。ロッドが私のために贈ってくれたのですから。


 明日の夜会に絶対につけていきます! ロッドが傍にいてくれるようで心強いですわ!


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