>>ネットワーク内 各位 @オンライン抗戦

布原夏芽

Animalia

投稿者:畜生 @animalia

肌の色や生まれだけでこんなに運命が変わる世の中っておかしいと思う。

たしかに俺は全身が茶色いが、だからといって搾取されていい理由にはならない。

肌の白いやつらだってそれなりに大変な思いをして生きているのはわかるけど、やっぱり不公平だ。

2021-08-14 18:37:01



 暗い部屋でひとり、ネット上を徘徊していたら、こんな書き込みが目に留まった。


 パンデミックで大変な世の中だけど、今じゃ大概のことがオンラインでできてしまう時代だ。ネットを介せば、リアルでは出会えなかった人たちと交流することだってできる。


 肌の色で差別されているということは、これは海外の人の書き込みだろうか。

 ハンドルネームが「畜生」だなんて今時ちょっと古めかしいけど、外国語のスラングが自動で日本語に変換されているのだと考えれば納得だ。


 学生時代からずっと英語は一番の苦手教科だったけれど、オンラインでは自動的にこちらの言語へと翻訳してくれる。

 英語どころか、フランス語だろうがタガログ語だろうが、言葉の壁は取り払われ、考えていることを自由にやりとりできる。

 そのことに改めて感じ入りつつ、わたしは返信コメントを投稿した。



投稿者:名無し @ip3bkh

はじめまして。わたしも同意見です。

人種とか見た目とか、生まれつきのもので努力しようのない要素によって、扱いが変わらない社会になるといいですよね。

2021-08-20 10:23:42



 正直、日本で生まれ育ったわたしにとって、肌の色の違いによる差別というのはあんまり実感が湧かない。


 でも、見た目が人と違うことで悩む気持ちはよくわかる。わたしだって子どものころからたびたび、顔がブスだと揶揄からかわれてつらい思いをしてきた。


 人前に出るのは苦手だからと地道に打ち込んだ自由研究で賞をもらったときも、みんなの前で実験のあらましを説明しはじめたら、くすくすと笑い声が湧き起こった。

 あとから親友を問いただして、わたしが大きな声で読み上げるときの唇が醜くゆがんでいたことを、みんながあざけっていたのだとわかったときは心底傷ついた。


 高校時代、電車内で向かいに座っていた見知らぬ学校の男子生徒ふたりが、こちらをちらちらと見ながら悪意の透けた笑みを浮かべていたこともあった。

 終点でわたしが先に降りると、男子たちは小走りでわたしを追い抜かし、通り過ぎざまに振り返って、ぎゃはははと大笑いしながら走り去っていった。


 地域でも可愛いと評判の制服の学校だったから、わたしの見た目とのギャップがおかしかったのかもしれない。

 はっきりと何かを言われたわけではなかったが、少女期から受け続けてきた罵詈雑言が、わたしの脳裏でずっと響いて止まなかった。


 今はインターネットが十分に普及して、オンラインで顔を出さずに自己表現できるから、ルックスで不利益を受けることは減った。

 そのことにほっとしている一方で、積もり積もった負の記憶は消えない。


 さっき見つけた書き込み主の苦難が、顔だけじゃなくて全身の肌の色が問題なら、話はもっと深刻かもしれない。

 昔のわたしと同じような目に遭っている人が、この地球上にたくさんいるのだと思うと、他人事とは思えなかった。


 どこの国の人なんだろう。そんな込み入ったことを聞くのは失礼かな。


 少しだけ興味があったけど、そこに興味を覚えたわたしも、考えようによっては差別的な思考に片足を突っ込んでいるのかもしれない。

 そう考えると怖くなって、聞くのはやめておいた。

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