占い師は問題解決のプロである
「こういう仕事をしてくれる人、探してます」というサイトを訪問する。
そのサイト内には「こういうサイトを作ってください」といった依頼や「こういうイラストを描いてください」などといった依頼が掲示されている。
その中に、たまにおかしな依頼が提示される。
例えば「好きな人がいます。あの人の気持ちを教えてください」とか「失くしものをしたので、透視で探してください」とか「霊能力者になりたいです」とか、おかしな……もとい、ほんのすこーし変わった依頼も目にする。
ちなみに自分はアンチスピリチュアルである。
「気持ちを知りたいなら直接聞け」「失くしものなんて警察に遺失物届出せ」で終わるドライな人間だ。
と、占いをバカにしていたり、こういった依頼を出す依頼者や占い師は少し問題解決リテラシーが低いなーと思いつつ嘲笑しているのだが、あることに気付いた。
「あれ?占い師って、ある意味問題解決してないか?」
簡単な思考実験をしてみる。
今、あなたの目の前にブラックボックスがある。
開けることもできるが、中に何が入っているか分からない。
ヘビが入っていたり、ハチが入っていたり、あるいはお菓子が入っているかもしれない。
煙が出てきて老人になるかもしれないし、絶望が入っているかもしれない。
赤甲羅が入っているかもしれない。
あなたはこの箱の中身を知りたい。
どうする?
答えは簡単。
「箱を開ける」ことだ。
箱の中身を知りたいのだから開ければよい。
しかし、占い師やスピリチュアル界隈の人は「開けずに中身を予測する」。
依頼者は「第三者に聞く」ということをしている。
箱の中を知りたいときに占い師は「このトランプからハートのキングを引いたので、中には『こち亀の全巻』が入っています」と言い、依頼者はこの占い師に「すみません、あの箱の中身を教えてもらっていいですか?」と聞いているようなものだ。
当然、箱の中身はわからないままだ。
しかし、この方法でも問題を解決できることに気付いた。
ただし、解決できるのは「不安」という問題だけだ。
「箱の中身を知りたい」という問題は「箱を開ける」ことによって解消されるが、「箱の中に『こち亀の全巻』がある」と伝えると「不安」が解消される。
「不安」とは、正体不明の問題に直面した時に起こる感情だ。
正体不明というところが大事で、これが具体性を帯びる――例えば「目の前にライオンがいる」「目の前に強盗がいる」など具体的な問題になると「不安」ではなく「恐怖」に変わる。
不安がってる場合ではなく、逃げた方がいい。
この正体不明の問題を解決してくれるのが占い師だ。
つまり、占い師は問題解決のプロである。
先ほどは「箱の中身を知りたい」という簡単な例を出したが、もっと複雑な問題でも適用できる。
例えば「がんを治療したい」「受験で合格したい」などの問題を考える。
両方とも複雑な問題であるが、解決策は必ずあるはずだ。
箱を開けるのに鍵が必要だが、ものすごく複雑な形で作るのが難しい、という状況に似ている。
ここで科学者はどうするかというと、錠を分析し、錠に合った鍵を作る。
あるいは、既に他の誰かが作った鍵を使わせてもらう。
一方占い師は、鍵を作ったり、探したりすることはせず、「この箱の中身は何か」という疑問自体を払う。
「あの箱の中身は『こち亀の全巻』だ」と思い込むことによって疑問自体を解消する。
これにより、占い師はどんな複雑な鍵だろうと問題を解消できる。
依頼者も占い師に教えてもらうことで、「箱の中身を知る」という問題ではなく「箱の中身は何かという不安」がなくなる。
しかし、この方法には弱点がある。
箱自体は放置されたままなのだ。
放置して何もなければよいのだが、この箱が被害を与えることもある。
例えば「この銀行のシステムが止まったので直してほしい」と頼まれたエンジニアが「それは神様のいたずらなのです」と説得したところでシステムは止まったままである。
なので「不安を解消したい」という問題を解決したいときに占い師を頼ればよいのであり、本当に問題を解決したいのであれば、その道のプロに頼むべきだ。
依頼者は自分の胸に手を当ててほしい。
「問題を解決したい」のか「不安を解消したい」のか。
自分はどちらなのだろうか、と。
あなたの目の前に、鍵のついたブラックボックスがある。
鍵を作る、あるいは他の誰かが作った鍵を探すのか、それとも「あの箱の中身は『こち亀の全巻』だ」と思い込むことにするのか。
あなたはどちらの解決策をとりますか?
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