第四話
4:
「ほー」
これはこれは。
次に入ったのは『透明迷宮』というアトラクションだった。
迷路が置いてあるだけなのだが、すべての壁が透明な板で仕切られている。
遠目を見れば、外が丸見え――外から中が丸見えな迷路で、
ちょっと面白い。
手探り感覚で道を探す。
「おーい」
私と同じようにきょろきょろしながら先に進んでいる兄。
「ちょっとまってよ」
気が付けば、どんどん先に行ってるし。
追いかけようとして、
がん!
透明な壁に頭を打ってしまった。
「いたたた……」
頭を抑えて顔を上げると、兄の笑い声。
「馬鹿だなぁ」
むかむか
「うっさい!」
怒っているのに、この兄はけらけらと笑って、
「先行ってるぞー」
がん!
兄がそう言って動いた際に、頭を透明な壁にぶつけた。
「いててて」
「ばっかじゃないの」
ざまあみろ。と胸中で笑ってやる。
「あー……ってかよ」
額を押さえて、兄が辺りを見回す。
「どうやって出るんや? これ」
「…………」
辺りを見回すと、そこら中に透明な壁が立ち並んでいる。
ゴールはあるが、明らかに一直線に進めない、簡単に到着できる様子ではなかった。
戻る……れない。
来た道も透明な壁だらけでまったく分からず。
さらに、このアトラクションは放置してあるかのように、スタッフさんもいなかった。
これ、どうやって出るんだろう……。
透明な壁で仕切られた迷路――そのまんまの名前だった『透明迷宮』から出れたのは、それから一時間弱もかかった。
兄のほうが先行していたのに、なぜか私の方が先にゴールしてしまい、
道順を覚えつつ兄と引っ張り出そうとしたのだが、合流したら合流したで兄がめちゃくちゃな方向へ行くものだからまた迷ってしまった。
他にもゴールの道がありそうやな?
うん、ふざけるな。
心底そう思った。
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