第六話

 6:

 別段、龍之介の言葉で火蓋が切られたわけではない。

 じっくりと、それぞれがゆっくり歩き出し、

 相手の様子を伺いつつ間合いを取り合い、

 たまに靴底を滑らす大きな音を立て、

 咳払いして喉の調子を整える者、

 手に持った武器や、包帯を巻いた拳を握り直す者、 

 ただ無言で、身動きする音を鳴らして、

 じっくりと――


 誰かが始まりの合図を出したわけでも無く、合図の代わりになるものがあったわけでもなく、

 ただただ静寂の中から――始まった。

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