第23話 復活

・「う、、、」


俺は目を覚ました。


・「ここは?俺はどうなった?」


体が動かない。

だが痛みを感じる。

どうやら生きている様だ。

サリウスが上手く止めてくれたんだな。


あいつが剣を抜いた時。

一瞬だけ安心した。

「これで死ねるんだ」って。


両親が事故で死んだ時。

無免許飲酒運転で突っ込んだあいつを恨んだ。

知らない間に示談が成立して。

全てを無くした時に思った事。


「もう死んでしまいたい。」


その感情も取り戻した。

俺は自分を取り戻せたんだ。


・「うぉ、、、ぉ」


痛む体を何とか起き上がらせようとする。

しかし体は言う事を聞いてくれない。

起き上がる事は出来なかった。


・???

「浩二、まだ寝てなきゃ駄目よ。」


優しい言葉が聞こえた。


・「母、、、さん?」


懐かしい。

あれは俺が熱で寝込んでいた時。

無理に起き上がろうとして怒られたっけ。

はっきりとは覚えていない。

でも夢の中で父さんと母さんに逢っていた。

そんな気がした。


・リーム

「お母さんじゃないよ。」


リームだった。

あれ?ここはフーバの筈だよな?


・リーム

「心配しました。

やっと目が覚めたんだね。

ずっと待ってたよ。」


ずっと待ってた?

そんなに時間が経過したのか?

体が動かないのはそういう事か。


・リーム

「いろいろ聞きたいだろうけど。

今は無理しないで休んでて。

お水、飲む?」


リームの優しさが身に染みる。

俺はふくむ程度に水をもらう。

もっと欲しいのだが。


・リーム

「ゆっくり飲んで。」


リームに言われてゆっくりと飲む。

体に染みわたる。


・「ずっと、居てくれたのか?」


・リーム

「そうだよ、みんなと交代でね。

もう少し休んでて。

いまみんなを呼んでくるからね。」


そう言ってリームは立ち上がった。


・リーム

「浩二、、、無事でよかった。」


リームは俺の頬にキスをした。

そして部屋を出ていく。


俺は彼女の手先の傷に気付いていた。

荒れて、切れて、血を流して。

それでも布を絞っていたのか?

俺の身体を拭くために。

俺の熱を下げるために。


・「リーム、、、ありがとう。」


リームは交代でと言っていたが本当は違った。

この役目は私の役目だと言って譲らなかった。

睡眠をとる時以外はずっと浩二の傍にいた。

ずっと傍で看病していたのだ。


暫くすると部屋の前が騒がしくなる。


・リーム

「起きたばかりなので一人ずつです。

浩二に無理をさせない事を約束して下さい。」


リームの声が聞こえた。


・リーム

「浩二にあまり負担を掛けたくありません。

一人5分程度でお願いします。」


しっかり仕切っているな。

何だか頼もしい。


するとエミリアが入って来た。


・エミリア

「浩二、えっと、、、おはよう。」


・「ああ、おはよう。」


何だか気まずいな。


・エミリア

「えっとね、凄く心配したよ。

体は大丈夫?」


話したい事があるけど気を使ってる。

そんな感じかな。


・「ああ、もう大丈夫だ。

心配かけてすまなかった。

すぐに良くなるから安心してくれ。」


サリウスが居るからな。

彼の番になったらリバーサーかけて貰おう。


そんな調子でぎこちない会話が続く。

そして、、


・リーム

「エミリア、そろそろ交代の時間よ。」


エミリアは俺とリームを交互に見る。

本当はまだここに居たい。

もう変わる時間なの?

とか考えてるんだろうな。

サリウスが来るまで我慢してくれ。

そうすれば元気になるから。


次はエリシャが入って来た。

彼女はそんなに気にしないで話すだろう。


・エリシャ

「えっと、、、おはよう。」


エリシャお前もか!


・エリシャ

「えっとね、浩二が寝てる間に色々しらべ、

じゃにゃかった、えっと、こ、浩二は、

浩二はにゃにが好き?」


どんな会話ですか?

なにやら口止めされてる事があるらしい。

でもエリシャ的には話したい。

話して褒められたい、と言った所か?


・エリシャ

「んと、、、んと、、、

浩二はにゃにが食べたい?」


必死に話を繋ごうとするエリシャ。

すごく気まずいです。


そして、どうでもいい質問攻めが続く。

徐々に聞くことが無くなっていく。

最後の方はエリシャも困っていたようだ。


ちょっと面白かったので観察していた。

なんだかすまん。


・リーム

「エリシャ、そろそろ時間よ。」


エリシャがリームと俺を交互に見る。

いや、もう質問しつくしただろう?

サリウスが来たらちゃんと話を聞くから。

今は大人しく下がっておきなさい。


続いてフーバ王が入って来た。

ここ最近の情勢とか聞いて置きたいな。

しかし、俺はあまり声が出せない。

話してくれると良いが、、、


・フーバ王

「うむ、、、。」


部屋に入ってからゆっくりと進んでくる。

かなり深刻そうな顔だ。

どうやら安心して良さそうだ。

どの様に世界情勢を説明しようか考えてるな。

流石は一国の主だ。

それでこそ王様だよ。


ベットの傍で椅子に座るフーバ王。

大きく深呼吸をする。

そして、、、


・フーバ王

「、、、、、おはよう。」


ダメだ、これ終わったわ。

同じ流れじゃねえか。


・フーバ王

「浩二殿、元気になったら何食べたい?」


お前は彼女か!

いや、優しくしてくれるのは嬉しい。

だけどそうじゃないだろう!


・フーバ王

「そうだ、この国には景色のいい湖がある。

元気になったら二人でそこへ行こう。

豊かな自然を見ながら食べるご飯は格別だぞ。」


いや、彼女か!

悪いが断る。

おっさんとの湖デートは流石にきついぞ。


どうやら混乱しているフーバ王。

見た目は変わってないから質が悪い。

ポーカーフェイスも考え物だ。

その後も謎の勧誘を受け続けた。


・リーム

「フーバ王、そろそろお時間です。」


・フーバ王

「そうか、楽しい時間は早く過ぎるな。」


嘘つけ、後半は完全に手詰まってただろう?

かなり見苦しかったぞ。


フーバ王が退室していく。

一体何しに来たんだ?


次に入って来たのはリンネだった。


・リンネ

「こうしてゆっくり話すのは初めてね。

具合はどうかしら?」


どうやらリンネは大丈夫そうだ。

やっとまともに会話できそう。


・「迷惑を掛けたみたいだな。

すまなかった。」


・リンネ

「気にしなくて良いわ。

私達も自分の意志で行動したのだから。

本当に無事でよかった。」


心配してくれるリンネ。


・リンネ

「サリウスから聞いたわ。

あの人も『リバボン』が使えるって。

私が聞きたいのは一つだけ。

サリウスの回復魔法を受けるの?」


そう言えば『リバボン』と言う名前の回復魔法と認識されてるんだっけ?サリウスよ、そこは訂正してくれても良かったぞ。


・「そのつもりだよ。

これ以上迷惑かけれないしね。」


・リンネ

「そう、、、良かった。

みんな本当に心配してたのよ。

私もこれでやっと安心できるわ。」


みんなの思いが伝わってくる。

そして、


・リンネ

「浩二は何か食べたいものある?」


この世界はこれが普通なのか?

まあ確かに病人に話しかける時は聞くか。

ん?まてよ、、、

確か元の世界で俺も同じ質問してたな。

どの世界でも共通なのかな。

考えた事なかった。


聞きたい事は一つだけ。

そう言っていたリンネの質問攻めにあう。

俺の体感で悪いが、

リンネの質問が一番多かった気がするぞ。


・リーム

「リンネ、そろそろ時間よ。」


リンネがすっと立ち上がる。

そして部屋を去っていく。

去り際の「また後でね」の一言。

どうやらサリウスの番がやって来たらしい。

ササっと治してもらわねば。


・リーム

「では、次は、、、」


・コーン

「私の番ですな!」


意気揚々とコーンが現れた。

何でお前が居るんだ!

次はサリウスだろう?

扉が閉まる直前、俺は確かに見た。

リンネのニヤッとした顔を。

奴の差し金か?


・コーン

「聞きましたぞ!

帝国勇者なんぞにやられたとか。

お陰でサリウス殿がエリシャ殿に殴られた。

全ては浩二殿が帝国勇者なんぞに負けたせい。

これは治ったら特訓のやり直しですな!」


こいつには知ってほしくなかった。

これで俺の特訓地獄が確定する。

しかしエリシャがサリウスを殴ったのか。

この仕打ちはリンネなりの報復か?

くそ、仕方がない。

甘んじて受け入れようではないか。


・コーン

「ささ、どの様に負けたか話されよ!

気にすることは無いぞ。

負ける事は大切な事だ。

そこから学び取り、改善すればよい。

ささ、恥ずかしがらずに話されよ。」


うぜぇ、、、こいつマジでうぜぇ。

理屈は解るけど、今聞く事か?

誰がこいつを呼んだんだ。

くそ、頼むチェンジで。

チェンジしてくれぇ~。


その後、コーンの怒涛のトークが始まる。

他の人より長かった記憶がある。

それ以外の記憶はない。


いや、、、思い出したくない。


・リーム

「コーンさん、、、、っぷ。

そろそろ、、、お時間です。」


おい、リーム、、、

今笑ってただろう?

ここからでもプルプルしてるのが解るぞ?


・サリウス

「やっと起きたんだね。」


やっとサリウスが入って来た。

そう思ったら全員が入ってくる。

みんな笑いをこらえていた。

こいつら、、、、


・サリウス

「心配をかけた罰だよ。」


笑顔のサリウスがリバーサーを放つ。

俺は緑の霧に包まれる。

正確言うと虫よけスプレーの様に吹き掛けられる。

こういうと何だが、何だか複雑な気分。

見る見るうちに傷が癒える。

嘘みたいに体の痛みも消える。

そして俺は立ち上がった。


・「ありがとう、そしてすまなかった。

みんなのお陰で自分を取り戻す事が出来た。

その上で初めて人を信頼できると思えたよ。」


みんなが居なかったらどうなっていただろう?

今となっては推測でしかない。

多分、俺は憎悪の海に溺れていただろう。

ただただ憎んであいつを殺し。

それでも収まらない怒りで狂い。

この命を絶っていただろう。


俺は幸せ者だ。

本当に良い人達に出会えた。

母さん、父さん。

もう大丈夫だよ。

俺はやっと、人間に戻れました。


だから言ったんだ。

心の底からあふれ出る気持ちと共に。


・「みんな、本当にありがとう。」

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