私のヴァンパイア

@sakura37

第一章 第1話

 ここは日本、俺はフランスを離れここに来た。東京、何て人間が多いんだ。日本の都市の中心だから仕方ないのか、だがこんなに人間の匂いが多いと俺の中の血がその人間の血を欲するのだ。今はこの衝動も抑える事が出来るが、誰だ? 日本人は体臭が少ないから欲情しないなんて言った奴は‥‥‥。


 日本語はフランスで学び直した。俺が知っている日本は戦国時代と呼ばれていた頃だ。宣教師と一緒にこの地にやって来た。武士が多く居て腰に日本刀を脇差に差していた。俺は当時の殿様、織田信長とよく鷹狩りなどに一緒に出掛けたものだが、彼、織田信長は城と共にこの世を去った。それからの日本ぶりだ。言葉も当時使っていた言葉は今は使われてはいない。


 フランスでも日本は人気だ。漫画やアニメなどで日本に旅行に行きたがる者は多い。まあ、俺もそうなのだが、あれから日本がどう変わったのか知りたかったのだ。世界大戦で敗戦国となった日本の経済発展は著しい。欧州も随分と変わったもんだよ。食事も手掴みで食べていたのに今ではフォークとナイフで食べている。そんな事を知っている俺は何者かって? 俺は不死のヴァンパイアだ。そう吸血鬼と呼ばれる者だ。存在していたのかって? 居るのだよ。ここにね。まずは住む所を探さないとダメだな。暫くはホテル暮らしか‥‥‥。


 この国は外見が違っていても余り気にしないのだな、国民性もあるのだろう。そうそうホテルに行かないとな、仲間からお勧めされた東京ステーションホテルに行くか。チャックインして荷物を置いてさあ行こう! 渋谷という場所に! タクシーも親切なんだな。タクシーを降りて歩く。ここがスクランブル交差点かあ! アニメでよくこの場所が出てくるんだよなあ。少し興奮している。人間が多い‥‥‥。


 マズイな人間酔いした、交差点を渡ってしゃがみ込んでしまった。


「あの大丈夫ですか?」

 声を掛けて来たのは日本人の女性だった。


「顔色が良くないですね。足元がふらついていましたよ。人混みに酔ってしまったのでしょうか? ここは人が多いですからね、近くのカフェにでも入りますか? それとも私のクリニックに来ますか? この近くで開業医をしているのですよ」


 そうかこの匂いはドクター特有の匂いだ。


「では、貴方のクリニックにお邪魔させて貰おうか、俺をそこへ連れて行ってくれないか?」

「解りました。患者としてお連れします。勿論診察も受けて貰いますよ」

「ああ、解った。‥‥‥実は立っているのも辛いんだ」

「まあ! それではうちのナースを呼びましょう。ここから近いので」


 そう言ってスマホで連絡をしてくれたようで、そのナースが来てくれた。俺は彼女達の肩を貸してもらってクリニックに着いた。


「まずはベッドに寝ましょうか」

 俺はクリニックのベッドに横になる。ドクターだと言った女性が聴診器で肺や胸の音を聞く、

「吐き気とかありますか? 特に痛む所とかはないですか?」

 色々問診をされた。簡単な採血結果なら直ぐ解るからと血を採られた。

‥‥‥‥‥‥。結果が出て、

「軽い貧血があるようですが、この位なら大丈夫でしょう」


 そうか、最後に飲んでから10時間は過ぎているな。そろそろ補充しないと襲ってしまいそうだ。


「もう少し休んでいっていいですよ」

 とさっき肩を貸してくれたナースが言う。


「実は腹ペコなんだ」

 と俺が笑顔で返すと、ふっと笑って、

「近くにハンバーガー売ってますよ。買って来ましょうか? 好きな物とかあります? 今キャンペーンで照り焼きバーガーセットにアップルパイが付いてくるんですよ!」


 それを聞いた女医ともう一人のナースが

「私もそれ欲しいから買って来て」

と話す。

「では、俺も皆さんと一緒でお願いします」

「はーい! 受付の理子ちゃん一緒に行きましょう! もうお昼だし!」

「では、院長行って来まーす!」


ヴァンパイアだが普通にメシは食うぞ。血液だけなんて事はない。


 彼女達が帰って来て一緒にハンバーガーを食う。

「そういえば、マルクスさん日本語お上手ですね」

と、受付をしていた理子と呼ばれていた女性が聞いてきた。


「以前日本に居た事があったので」

戦国時代だがな。とにっこり笑顔で言う。そこに、


「おーい! 柏木先生はいるかな?」

 と男性の声がする。受付の理子が声の方に行く。

「あら、警部さん。また、何かあったのですか?」


 警部! 日本のポリスか! 何故ここにポリスが来るんだ?

「検死ですか?」

「まあ、そんなもんだが、まず現場に来て欲しいんだ。先生の意見を聞きたい」


 面倒くさそうに女医は

「美加ちゃん用意して行くわよ」

「俺も一緒に行ってもいいかな?」


 皆が俺を見る。当然だよな、関係者じゃないのだ。

「恥ずかしいが、俺もドクターのライセンスを持っているんだ。何か役に立てるかも知れない」


 ポリスは困った顔をしたが俺はそのポリスの目を見つめて力を使う。相手の意思を操る事が出来る力を。

「あまり公には出来ないが、今回はいいだろう。ここは他のドクターの意見も参考にしたい」

俺の能力で断れないようにしたからポリスは俺を連れて行く。

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