第9話 承認欲求を満たす哀れな女の物語
皆さんには承認欲求はお持ちであろうか。人間なのだから多少はあるかもしれない。人に認められたい、見られたい、有名になりたい。色々思うことはあるだろう。ただ、それが過剰にある人はどんな人なのだろうか。そしてどのような結末になるのだろうか。気になりますか?
正直私は気にならない。なぜかというとそういう奴は生理的に無理だからだ。だから眼中にも入らないし、気にもならない。いっそどかこで地獄でも落ちてればいい位の事しか考えていない。
今回はそんなSNSで自分を満たす女の話を私、雨宮莉奈がするとしよう。
そういえばタイトルを考えていなかった。ならこんなタイトルはどうだろうか
「承認欲求を満たす哀れな女の物語」
味気ないタイトルかもしれないが、この『
キャバ嬢というのは色んな女性が集まる。お金に困っている人、お金持ちになりたい人、普通にこの職が好きな人、そして男性などからチヤホラされたい人、様々な人が個々の目的の為今日も集まっている。
「莉奈ちゃんおはよー」
更衣室で私の名前を気安く呼ぶこの女が小口りんだ。
「小口さんおはよう」
私は距離感を出しながらそう返した。いつもこの暗い冷たさと距離感で接しているのだが、彼女はお構いなしでいつも話しかけてくる。
こんなに健気に私に懐いてくるのだから、もしかしたら、この女の良いとこを少しでも見つけたら好きになるのでは? と気の迷いで考えた時もあったが、それは到底無理だった。
「莉奈ちゃん見て見てー、こないだブランドのバッグ買ったのー」
そう言ってSNSを開いて写真を見せてきた。その写真にはニッコリ笑う小口がいた。そして何故か胸元をガッポリ開きその大きい胸を見せていた。ただ単純に脂肪の塊を見せたいだけである。バッグを自慢する気なんて到底ないのだろう。
「それでね、いいねが1万超えちゃってさー。軽くバズったのー」
私にとっては死ぬほどどうでいい情報を教えてくれた。そしてバッグを自慢したいのか、胸の脂肪を自慢したいのか、よくわからない写真にいいねを押す連中は相当心が広い連中なのだろう。その優しさを私に1mmでもいいから分けて欲しいものだ。
「よかったね」
私は出来損ないのオムレツを見るような冷たい目で言った。
「莉奈ちゃんもやりなよ、SNS。莉奈ちゃん可愛いから人気でるよー」
そんな提案をされたが全く興味がなかった。もしいいね1つが100円とかするなら、私も喜んでやっただろう。でも実際は貰えるのはなにもなく、あるのは承認欲求を満たすためだけの存在だ。
SNSを正しく使えば情報の共有や宣伝とか使えるのだろうが、この女みたいになるのは御免被るのでやらない事にした。
「私は興味ないから」
そう返した。
「莉奈ちゃーん。3番テーブルご指名だよー!」
奥からボーイがそう呼んでいた。
「じゃあ、私行くから」
「いてらーがんばってー」
小口はスマホを見ながら手だけ私の方を向けて振っていた。
(本当に嫌いな奴)
そう私は心の中で呟いた。
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