第13話神奈子の気持ち

「涙橋で待ってるから」


神奈子はそれだけ言って電話を切る。


時計を見るとまだ午前5時。


なんかやな予感がする。


別れ話かな?


母は台所で机にうつ伏せで寝てる。


日本酒の一升瓶が空っぽになってる。


しょうもない飲んべばばあだ。


そうだった。この家に今食材はないんだった。


財布の中を見ると、百円玉が3つだけあった。


仕方がない百円ローソンで何か買おう。




涙橋に行くと神奈子がセーラー服姿で待ってる。


俺の顔を見ると微笑んでくる。


ディスクユニオンの袋を押し付けてくる。


「借りてたCD 」


「ああ、いつでもいいのに」


「たまにはいいでしょ、朝の早起きは三文の得って言うよ」


そう言って神奈子は河を見つめる。


「なんか怒ってる?」


「なんで私が怒ってるって思うの?」


神奈子は怪訝そうに口を曲げる。


「高校ダブったから」


「まあ、良いことじゃないけど、あんたらしいわよ」


なかなか理解力あるな。てっきり怒ってるのかと思った。


「じゃあ私まだ朝ご飯食べてないから、家に戻る」


「もう帰っちゃうの?」


「キスのひとつもしないのかって?」


「いや、無理にしたいとは思わないけど」


「あんた、性獣っぽい割に理性のストッパーがかかるのよね。またね」


神奈子の背中は哀愁を帯びてる。


大体の女性の後ろ姿はこんな感じだよな。


まだ朝6時になってない。


学校が始まるまで時間がある。


早く来い来い夏休み。


2021(R3)6/28(月)








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