第21話 合流、そして
「……」
目をきつくさせたままのほむらちゃん。
その胸中は複雑な思いがあるからだと思う。
確かに、鉄摩《テツマ》さんがニニちゃんを見捨てたのは許せない。
だけど、ほむらちゃんも動けなかったから、それを悔やむ気持ちがあるんだ。
あの時、暴走する
でもね、ほむらちゃん。
火事になった建物から人を助けようとして亡くなる人もいるんだよ。
仮に龍の炎を放ったとしても、玄を消滅できるとは限らない。
最悪、暴走した玄が龍の炎をコピーして一帯を焼き尽くすことだってあり得るんだから。
ほむらちゃんが死んだら、私、泣くだけじゃすまないわよ。
悪いのは鉄摩さん。
ぼやで済むのを放っておいたうえに、助ける気もなかったんだから。
「久々に無力な自分を思い知ったぜ……」
……。
……。
……。
?
と、目の前に
「ち……」
身構えるほむらちゃん。
もしかして、鉄摩さんを気絶させたから、仕返しに来たのかな。
「あーあ、随分と派手にやったわね」
周りの壊れたモニターや機材、倒れてる
「瑠羅……、何の用だ」
「構えなくていいわよ。ほむらと戦う気はないし、私は案内をするつもりで来たから」
「案内?」
「そうよ」
そう答えて瑠羅ちゃんがパチンと指を鳴らすと、雷羅ちゃんの量産型三人が消えた。
例のごとく、治療室へ送ったのよね。
量産型だから廃棄ってことは──。
「気を失っているだけだから、ベッドに寝かせておくわ」
ほっ。
よかった。
「あいつはいいのか」
「父様ね。いいわよ、そのままで。自己修復能力があるし、
「慕っているような感じだったが、素っ気ねえな」
「これが私なりの愛情なの」
少しむっとしたかんじで、瑠羅ちゃんは言った。
「で、案内ってのは?」
「今のニニのところよ」
「ああ、あの女か」
「どうせ追いかけるんでしょ。データは取れたんだし、充分よ」
「データ……。まわりくどいことをしてたのは、やっぱりそのためか」
「まあね」
あっさり答える瑠羅ちゃん。
うすうす気づいていた。
だって、球体を得ようとするだけなら一対一で戦うようなことをするより、睡眠ガスで眠らせるとか、結界に閉じ込めておくとか、他にいろいろ効率的な方法があるもの。
「じゃあ、行くわよ」
そう言うと瑠羅ちゃん、有無を言わさずほむらちゃんと瞬間移動した。
ほむらちゃんはいいとも、ダメとも言ってないのに。
とにかく了承前提で発言したら即実行なのよね。
でも、球体の反応からすると、あの子と
場所によっては同じ部屋にいる。
──と。
ここは、試験場?
床がコンクリートなのを除けば、内装自体は体育館そのものだし、広さもそれくらいあるんだけど、縦横に五メートルくらいの間隔で白いラインが引かれているから、体育館というよりはむしろ試験場という言葉がでてくる。
奥側の方に球体を持つあの子がいて、その横に並ぶ位置に瑠羅ちゃんとほむらちゃんが瞬間移動したんだ。
そして、目の前十メートルくらいのところにいる聖名夜ちゃんが、
「おーっ、ら!」
「freeze !」
跳びこんでくる狼羅ちゃんに、聖名夜ちゃんは氷結魔法を放った。
「……!?」
全身が氷に覆われる狼羅ちゃん。
気力と魔力流路が閉ざされ、気を失うと、目的を完了させた氷は弾け飛んで、狼羅ちゃんを解放。
狼羅ちゃんはそのまま背中から倒れた。
「む、むえええい!」
「おおおおおぉー!」
かけ声とともに利羅ちゃんが聖名夜ちゃんに斬りかかる。
でも二人は幻影の魔法にかかっているみたいで、聖名夜ちゃんの右側一メートルくらいのところを目指している。
聖名夜ちゃんは冷静にステッキを突き出し、利羅ちゃんの右脇をヒット。
「うっ……」
ステッキを突かれた利羅ちゃんは意識を奪われ、上段に構えたまま、前へ倒れた。
「そこか!」
残った利羅ちゃんが強引に体勢を変えて、刀を横に振るけど、お腹には一筋の光が走っていた。
「……」
聖名夜ちゃんの居合。
声を出す間もなく意識を刈られた利羅ちゃんは、そのままうつ伏せに倒れた。
随分あっさりとやっつけたけど、私たちが来る前に、魔法で弱体化させたり惑わしたりしていたようね。
で、この三人。
利羅ちゃん狼羅ちゃんで、それぞれ服装の形は一緒なんだけど、淡いピンクの色をしている。
利羅ちゃんは刀もピンクの半透明。
ほむらちゃんのときは水色だったけど、何か違うのかな?
「量産型とはいえ、あんたたち、よく倒せるわね」
呆れた顔をさせながら言う瑠羅ちゃん。
───全員倒した聖名夜ちゃんは、声のするこちらへ向き直った。
その視界には、ほむらちゃんがいる。
「……」
「……」
二人ともほっとした瞳をさせて見つめてる。
「ほむらに、聖名夜。思ったとおり、あんたたち友達同士だったのね」
その様子を見て瑠羅ちゃんが言った。
「こうなれば、隠すこともねえな」
「ええ」
ほむらちゃんの言葉に答えながら、聖名夜ちゃんは魔法で飛んでくると向かい合った。
「私たちは同じ親友を助けるために動いている」
「なるほど、それなら納得ね。ニニ」
「は、はい」
やれやれという仕草をすると、瑠羅ちゃんはあの子に声をかけた。
「父様は倒され、
「え、でも……」
状況がつかめないあの子に、右手の人差し指を振って頭から頭へ情報を送る瑠羅ちゃん。
「そんな……」
「分かったでしょ。さあ、出しなさい」
「……」
おそるおそる、ワイシャツの胸ポケットから球体を出すあの子。
「ありがと。じゃ、あんたは休んでなさい」
当然とばかりに、瑠羅ちゃんは球体を手にすると、左手をパチンと鳴らした。
同時に、あの子と倒れている利羅ちゃん狼羅ちゃんも消えた。
「邪魔者は完全にいなくなったわ。さあ、受け取りなさい」
そう言って瑠羅ちゃんは、球体を持つ右手を差し出した。
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