#33 食堂・厨房編

 食堂へとやってきた僕たちは、四人掛けのテーブルをくっつけて八人がけにする。こちら側に僕とレナ、ナナが、向こう側にシャルとミリィ、ザーシャ、ラーシャ、それにカルラさんが座った。護衛の人たちはみんな立っているか、敷地内の見回りをしている。


「それでは、アオイさん。先程仰っていたことについて説明して頂けますか?」


「うん。とりあえず、僕はここで雇うのは孤児院の卒業生たちだけにするつもりで考えていたんだ。もともと、僕がここを作るって決めたのはラーシャ、ザーシャのような目に合う子たちを減らすため。現状では孤児院を出て満足に生きていける人はたった半分しかいないという。だから、卒業生の新たな働き口の確保、及び在校生の職業技能の習得のための訓練施設としてここを建設した。もうすでに雇う人の選考を初めていたのかもしれないけど、ここに関しては曲げるつもりはないよ」


「・・・いえ、別に人員の募集などは行っていませんでしたが。しかし、なんというか、意外ですね」


 シャルは僕の説明を聞いて意表を突かれたのか、少し間が開いてから返答する。


「なにが?」


「その、個人や特定の団体に肩入れするようなことはしないと思っていたので意外だな、と」


「ああ、そういうことか。まあ、たしかに他の龍たちは個人や特定の団体に肩入れするようなことはしないようにしているけど、僕らは人間としての生活も長いしあまり気にしないかな。人間として生活するには、そんなことを気にしていらんないからね。・・・それに、まだ計画していることは多い。一つだけに恩恵を与えるなんてことにはならないさ」


 最後は周りに聞こえないように小声でいった。ただ、レナには聞こえていたようでチラッとこっちを見てきたので、笑顔で返す。レナはまだ何か企んでる、とあきれ顔だ。

 前にも説明したかもしれないがこの世界には魔法があるせいで、文明の発達に対して科学の発展が著しく遅れている。身近にあるものの原理がそういうモノとしてとらえられてしまっているのだ。そこで、僕はこの世界に科学という世界を知る学問を伝えようと思う。生活、理科、化学、生物、物理、地学。以上の6教科は高校までに学校でやる科学の基礎となる教科だ。現代っ子は皆、生活・理科の2教科は必ず習ったはずだ。高校まで行ったのなら、化学・生物・物理・地学のいずれか2教科もやったのではないだろうか。もしかしたら、基礎の名を冠していた(化学基礎など)かもしれないが。

 話がずれてしまった。僕が何を言いたいのかというと、僕はこの世界が数千年をかけてたどり着くであろう未来の知識を現在に伝えてしまおう、と思うのだ。僕は神ではないのでこれをして世界がどんな方向に変わっていくのかはわからない。僕にできるのは変わる方向を誘導することまでであろう。だが、どんな形であれこの世界はよりよくなる、いや、よりよくすることに変わりはない。もし世界が悪化しそうになったのならば、僕はこの身をもってそれを止めよう。それが変えたものの責任というものなのだから・・・



―――*―――*―――



 次回は再来週を予定しています。

 ・・・もしかしたら伸びるかも知れないけど一ヶ月以内には確実に投稿します。

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