第372話 2015年8月 17

防波堤は当時より大きく、高くなっていた。

以前、俺達は、俺は勢いをつけて1.5mほどの高さのそれを登ったのを思い出した。

でも、今の防波堤は、津波で損傷したのと、高さをカサマシして大きく高くなって、とても、勢いで登れるようなものではなくなっていた。


当然、防波堤の向こう側などは、うかがい知ることなど出来ないし、崖を作っていた小山とそれを迂回するために大きく曲がっていた道路は、その小山を切り崩して、そこはまっすぐな道路に挿げ替えられ、5年前のそれとは大きく違っていた。


ああ、リリィさんのお気に入りの場所……

無くなっちゃったんだ……


でも、どこかに防波堤を登る階段があるはずだ。

以前に砂浜に降りた時には小山の向こう側、今では直進した100m程のところだろうか、視線をそこに映すと、やはり……そこには、当たり前に階段があって……


蒼い月夜に照らされた。白い防波堤は、俺には彼女の元に導く真っ直ぐな一本道の様に感じられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る