第363話 2015年8月 8

「リリィさん……

ゴメン……」


「……」


歩き出した。

無言で……


というか、俺の存在を消して、もう、そこに俺がいないのと同じようにリリィさんは早歩きで、混雑する人の流れよりも早く進んで、俺との距離を引き離そうとしていた。


「リリィさん!」


完無視だ。

まずいな……


謝るタイミングさえもらえない……

可愛いワンピースを着た華奢な背中を見つめながら、見失わない程度後ろに離れて、リリィさんを追う俺は、彼女の持つ怒りの元について思いを巡らせていた。

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