第318話 卒業アルバム1
『俺の夢』
六年一組 佐藤健太郎
私は、16年遅れて六年生になりました。満島校長先生のお力添えと先生方、PTAのご理解で私は無事に卒業することができました。この場をお借りしてお礼を言わせてもらいます。
最初に、六年生をやらないかと言われたときは、流石に冗談か何かだと思いましたが満島先生はいたって真面目、真剣で、聞いた私が面喰ってしまいましたが、すぐに先生の本気は私にも伝わり、この御誘いを受けないと、私は後悔する。一生後悔すると……
いや、当時はそこまでは思っていませんでした。
御誘いを断る事への申し訳ない気持ちの方が強かったか。と……
でも、今は間違いなく、断らなくてよかったと、チャンスを頂いてありがとう。と、本心で思います。
ある時、先生はおっしゃいました。
「夢をあきらめるな。大人こそ夢を持って、夢の原石を自分で磨け」と。
何故、そんな事になったかと言うと、この卒業文集に書く、まさにこの原稿を私は授業中一文字も書かずに、つまり、白紙で返したからです。
それは、六年生の周りのご学友の夢があまりにもキラキラ眩しくて、とても、日々の生活に追い立てられている私の様なものが描く、どっかから持ってきた、とってつけたような夢の話があまりにも陳腐に見えそうで怖かったからでした。
そんな事は、満島先生はお見通しだったのだと思います。暫くしてから、校長室に呼び出されました。その時に言われたのが先ほどの言葉です。それから、こんな事も仰っていました。
「無いのなら、今すぐ夢を持て、そして、臆面もなく叫びなさい。それが、可能性になるのだから」
私はどこかで自分の可能性を見積もって、自分で上限を定めていたようです。その言葉で、私は気が付いたのです。夢を見ることの意味が、重要さが。
満島先生、ありがとうございました。先生の言う通り臆面もなく叫びます。
俺は教師になる。
満島先生の様な、ずっと昔の生徒も見捨てない先生になります。
天国で見守っていてください。
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