第225話 理由2

「私さ、子供が出来たんだ……」


え?


「子供……」


「あ? ああ、そうじゃないよ」


「私ね、子供の時に親が死んじゃってさ、本当の両親の事、あんまり覚えてないんだ。

あ、前に言ったっけ?


で、よくある話よ。


親戚中、たらい回し、それで、高校出て東京に出て、小さな会社に勤めて……

出来た男に……

借金つくられて……

その保証人になって……

この世界に沈められたの。


それでさ、この世界の事は、全部消去!


リセット!


して、再出発しようとした時に……


東京で良くしてくれてた人が、5歳上の人が、死んじゃったんだ……

病気で……

シングルマザーで、旦那は借金つくって出てって、どっかで行き倒れ……


それでね……


しょうがないじゃない……


その人の娘がさ、


『お姉ちゃんと一緒に居たい。知らない人のとこに行きたくない』


って、泣かれてね。


仲良しだったしね。その子と。

それに、その子の前で、葬式の最中に誰が面倒見るかで親戚が揉めてさ……


昔の自分と被っちゃってね。


それ見てて……


だったら、良いよ……


私が面倒見るって。

言っちゃった。


……そんなの言えないよね……


結婚相手にも……


私の……

ホントを言わないと説明付かないじゃない……


でも、言えないよ。


こんなんでも……

言いたくない事って……

あるんだから……そのくらい許されるよね。


だから、別に好きな人が出来たって……


あんたなんかより金持ちで、格好良くて、優しくて、私にお似合いの人だって言って……

振っちゃった……


だから……終わり。


私の夢はもう覚めたの。

もう夢は見ない。


その子の事……


養子にしたの……


これからの私の全て……


私の生きがい」


小刻みに身体が揺れる。

声を殺して、嗚咽を殺して、シーツに伏せて、レイアさんは泣いていた。

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