第127話 未海さん9

「………………」


未海さんが玄関のドアを開けて、立っていた。


「良いから、入っていなさい!!」


お母さんが振り向き、激しく言う。


「未海ちゃん! 私とお話しよ!!」


未海さんは少し前に歩み出て制するお母さんの腕を払いのけると、リリィさんの前まで進んだ。

未海さんは、口をギュッと堅く閉じているが、その視線は、子供ながらに覚悟を決めたように俺は見えていて、その視線の先にはリリィさんをハッキリととらえていて、数歩、お母さんの前に出て、リリィさんの前に立つと、ゆっくりと呼吸をして、表情を硬くした。


「リリィちゃん……ごめんなさい……私、ちゃんと、ごめんなさいも、ありがとうも言えてなかった。だから、最初に言わせて……こんなに遅くなっちゃったけど、ごめんなさい。そして、ありがとう……」


クラスでも背の小さな未海さんは、俯いて、小さくお辞儀をして、声なく涙を流していた。頭一つ大きなリリィさんは、小さく見える未海さんを抱きしめて、耳元で小さく囁く……


「……一緒に海を見に行かない?……そこで、お話し……しよう……」

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