インビジブルナイツ 〜竜の首コロシアムへようこそ!〜
翔田美琴
白練の章
第1話 伝説の魔剣
後の世の人間たちは、この荒々しくも眩しく生きた人々の時代をこう述べたという。
大地が、海が、そして空さえも、最も”生きること”について輝きを放った世界だ、と。
この”世界”では、そこで定められたルールも現代よりもより遥かに単純な世界だった。それは”殺すか、殺されるか”。
彼らの一様に熱っぽく、そしていくばくかの憧憬を孕んだ先に映るのは、けして人の世界に囚われることを知らない天空を行く飛竜たち。
だが、この天空にある国家のある”大会”が、彼らの憧憬の先に映す栄光の舞台とも言える”聖域”だった。
紺碧の空に浮かぶ天空の理想郷、空中都市アストリア。
空に浮かぶ、天空の楽園にとある一機の飛空艇が上陸を果たそうと進路をアストリアに向けて、飛んでいた。
そして眼前に浮かぶ浮島の大陸を見つめるとその大陸に上陸するべく徐々にスピードを落とし、着陸態勢に入る。飛空艇は大陸の駐機場へと入り停まった。
そして、その飛空艇が駐機所に収まると、その飛空艇から今回の物語を紡ぐ四人の冒険者たちが姿を現す。
彼らの目的はただ一つ。
アストリアの闘技場コロシアムで最も栄誉ある戦い、グランドマスターズに出場し、優勝を果たすことである。
この闘技場コロシアムの正式名称は『竜の首コロシアム』。
そこで開催される『グランドマスターズ』とは、毎年恒例の冒険者たちの”宴”とも呼ばれており、その闘いに勝利した栄誉ある者には、最高の名声と共に、今年は名剣と名高い魔剣『ベルセリオス』が与えられるという。
ちなみに去年の優勝賞品は、オリハルコンという地上最強の金属で作られた名剣『覇者の剣』であった。
『ベルセリオス』とはかつてこの世界を破滅させようとした魔神を倒したという伝説の剣豪『ハロルド・ベルセリオス』の名を取った魔剣である。
その禍々しくも美しい剣は、地上最強の金属オリハルコンを凌ぐ硬さを持つ、暗黒物質ダークマターで作られている。
その漆黒の刀身からはありありと魔性の力が証拠として漂っている。それは目にするだけで、心に暗黒が塗りたくられるかのような感覚だ。
世界を破滅に導こうとした魔神は、知恵ある黒いドラゴンであったというおとぎ話で有名だ。
しかし、この魔剣は余りにも強い闇の力を秘めており、滅多なものしか扱いこなすことはできない代物である。
曰く、持ち主に災厄が降りかかるとか。
曰く、持ち主は神との闘いを余儀なくされる、とか。
何が真実を語っているのか、わからない。それほどまでに”秘密”を抱えた魔剣である。
だが、この魔剣の伝説は余りにも有名な英雄譚であり、様々な”英雄伝説”を愛好する者達からすれば、己の財産を全てなげうっても手に入れたい名品であった。
そしてここから彼らの物語も始まる。
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