命を軽んずるな!

 ペットは命だという事を忘れてはならない。


 今日も今日とてお疲れさんと帰宅してみれば卓に並べられたる犬猫のパンフレット。嫌な予感しかしない。


「ペット! ペット飼おうペット! 下妻氏はワンちゃんとネコちゃんどっちがいい!? あ、やっぱりワンちゃんだよねー! 分かる分かる! トイプーちゃん可愛いよね! リビングにお部屋作るから一緒にケージとか買いにいこ!?」


 どうして飼う事前提で話を進めているんだろう。俺には分からない。何も分からない。


「飼いませんけど」


「はー? よく聞こえませんがー?」


「だから、飼いませんけど」


「はー? よく聞こえませんがー?」


「いや、だから、飼いま……」


「はー? よく聞こえませんがー?」



 あ、これ、はいを選択しないと進まないイベント? 困っちゃったなー。




 馬鹿か。飼えるか犬なんて。




「生き物なんて気軽に飼えないでしょ。二人とも働いてるし、どう面倒見るつもりなん?」


「そんなもん私が会社辞めれば済むだけの話。それで万事解決。何の憂いもない」


 憂いだらけだ。俺の安月給じゃ女と犬を養うなんて無理だぞ何考えてんだ。いや、何も考えてないなこいつ。もう頭の中がトイプー一色になっている。しかし、それをストレートに咎めてもいつもの如く理不尽にブチギレるだろう。どうしたものか……そうだ。


「分かった。飼おっか。ワンちゃん」


「本当!? 私コーギーちゃんがいい!」


 トイプーじゃなかったんかい。まぁいいや。


「コーギー買うなら、来月の旅行は中止だけどいいよね?」 


「え?」


「ペット連れて旅館泊まるわけにもいかないし、仕方ないね」


「そこはほら、ペットホテルとか……」


「これかれからペット飼うならもれなく幼犬でしょ? 1匹でホテルなんて無理無理」


「……ペ、ペット可の宿泊施設とか……」


「いいけど、観光とかは制限されるね。屋内は勿論の事、屋外でも途中で疲れちゃうかもしれないし、機嫌損ねて動かなくなったりするかも」


「……」


「で、どのワンちゃんかう? トイプー? コーギー?」


「……いやぁ、命を軽々に扱うわけにはいきませんなぁ下妻氏」


「……」




 後日、犬カフェに行って満足した。








本日のQ&A


 Q.彼女が犬を飼いたいと言ってきたのですが、どうしたら止められるでしょうか。


 A.その場の感情で喋ってるだけだから適当に話を合わせておけ。ガチなら諦めろ。

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