1-6
「そうかしら?」
なんなんだよ、この探偵物の解決編みたいな雰囲気?
犯人は、俺か? 俺なのか?
頼むから、めんどくせぇのだけはかんべんしてくれよ!
「だからさぁ。互いに協力するもなにも、こっちが一方的に迷惑かけるだけだろ?」
「だったら、こうちゃんは、この部屋を見て、本当に相場君の部屋だって思うの?」
「は……?」
俺は、俺なりに精一杯思考回路を酷使したが……
どう考えても話の展開についていけそうになかった。
そしてそれは、未来の夫も同じらしい。
「そりゃ~。相場が案内してくれたんだから。相場の部屋に間違いはないだろ?」
だよな! 佐藤! 今は、お前に任せる!
将来夫婦ゲンカをした時の予行練習だと思って死ぬ気で戦ってくれ!
とてもじゃないが、俺には無理だ。
「不仲を演じ続けるつもりだった二人が同じクラスどころか席まで隣同士。今後の事を考えれば無視し続けるわけにもいかない。そうかと言って自分達の気持を素直に表現するわけにもいかない。まるで生殺しのような状況で始まった小型無線電話の話し。こうちゃんは、どう思った?」
「まぁ。ある意味、これ幸いって感じだった、かな……」
「えぇ。全くにもってその通り。私だってこの部屋を見るまでは、ただの偶然だと思っていたわ。でもね――」
「なっ……なんだよ……」
おい! 亭主!
なに、びびってんだよ! 俺を盾にするんじゃねぇ!
相手は教師ですら泣かす化けもんなんだぞ!
俺みてぇな、ヘタレ勇者じゃ目も合わせられねぇんだよ!
つかまれた肩も痛いが、それ以上に如月さんが発する威圧感の方に脅威を感じずにはいられない。
「ごくり……」
「この部屋を見ておかしいって思わないの?」
「いやいやいや、ちょっと待ってくれって。どうしちまったんだよ、さっちん。何も変な物があるわけじゃないだろ?」
「えぇ、そうよ。この部屋には、相場勇気を構成したと思える材料が何も無いの。むしろこれは異常と呼ぶべきじゃないのかしら?」
やっべ~。
ある日突然未知の能力に目覚めたとかって勘違いしちゃった系じゃねぇのかこれ?
まぁ、正確には、そう言う類とは別もんかもしれねぇが……
どう考えても似たり寄ったり。
許されることなら、一生係わりたくないタイプだ。
RPGゲームで言ったら、パーティーメンバーの選択ミスと言ったところか……
しかも、一度決めたらエンディングまでメンバーの変更が出来ない仕様なんじゃないのか、これ?
誰だよ! こんなクソゲー仕組んだヤツ!?
例え、神でも許さねぇぞ!
「相場君!」
「ひゃいんっ!」
「あなたは、自分が『純然たる読者だ』と言ったわよね!?」
「あ、あぁ……」
正確には、『純然たる消費者』だったはずだけどな。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
下手に訂正なんぞしたら、めんどくさくなるだけだ。
ってか、佐藤!
お前なにやってんだよ!
旦那なら旦那らしく妻をたしなめろよな!
物理攻撃だけなら、どう考えてもお前に分があるはずだろ!?
ちっくしょー。でけぇ身体してるくせにプルプル震えやがって!
こえぇのは、こっちだっての!
「だったら、どうしてこの部屋には小説の類が何も無いのかしら?」
「あ、いや、そ、れは……」
そもそも、自分自身に自覚が無いヤツにどう答えろってんだよ!?
クソゲーの上にムリゲーじゃねぇか!
そりゃ、俺だって色々と調べて見たさ。
机の下から、二段ベッドの上までな!
でもな、何にも無かったんだよ!
エロゲーも無けりゃ、エロDVDも無い。
一般向けのゲーム機も無けりゃ、ラノベだって無い。
在るのは必要最低限の教材のみ。
いや! まてよ……
むしろ、それならそれで……
「だってさ、勉強に必要ない物意外は原則禁止だろ?」
「えぇ。確かに表面上は、そうなっているわ。でも、だからと言って。私には、あなたがそれを素直に守る人には見えないの。実際。『これがないと眠れない』と言ってぬいぐるみを許可してもらった人だっているし。天文学に興味があるという理由で天体望遠鏡を持ち込んでいる人だっている。あなたと同様に読書が好きな人の中には大量の本を持ち込んだ人もいる。それなのに、どうしてこの部屋にはニュートンすらないのかしら?」
「いやいやいやいや! おかしいだろ! なんで単位の話しになるんだよ!?」
やっぱ無理! どう考えても俺の手におえる相手じゃねぇ。
「今話したニュートンが単位ではなく科学情報誌の名前だからよ」
「へ~。そんなんあるんか……」
「ほら、やっぱりおかしいじゃない」
「や、どこも、おかしくねぇ、よな?」
無駄を承知で佐藤に話を振れば……
無言のまま固まってる軟弱亭主が居た。
コイツ役にたたねぇ~。
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