【短編】うちの執事が私を溺愛しているようですが、どうにも度を越している
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第1話 うちの執事が私を溺愛しているようですが、どうにも度を越している
なんと言っても、うちのお嬢様は完璧だと思う。
甘い香りの漂うミルクティーのような艶やかな髪も、蜂蜜色をしたミステリアスな瞳も、熟れた果実のような魅惑の唇も。
どれをとっても美しい。
少し怯えたような甘えた声も、知らない人間には怖くて近づけない警戒心の固まりのようなちょっぴり人見知りな性格も。
とにかく可愛い。可愛すぎる。
え?婚約破棄された?しかも国外追放?
お嬢様の婚約者って、あの阿呆の化身みたいな脳内お花畑……いえ、第2王子でしたよね?
は?第2王子の恋人を虐めた罪?公爵令嬢であるお嬢様があんな胸が大きいだけで気品の欠片もない男爵令嬢をわざわざこっそり虐めたと?
いやいや、それ以前にお嬢様という婚約者がいるのに恋人ってなに考えてるんですか?……あぁ、ノータリンでしたね。
もちろんお嬢様がそんな事などしていないなどわかってます。この極度の人見知りに婚約者の浮気相手をこっそり虐めるなんて高度なテクニックあるはずありません。せいぜい遠くから顔を見るなり泣いて逃げて転けて逃げるくらいしかできませんよ。まぁ、お嬢様は泣き顔も可愛いですがね!
おや、何を拗ねてらっしゃるんですか?そんなに頬を膨らませて……誉めているんですよ?
おっと、旦那様がかなりお怒りになっているようですね。それはそうでしょう。だって私も怒っていますから。ん?まさか、お嬢様にではなくあの阿呆王子にですよ。
あぁ、申し訳ありませんが今夜は少し出かけて来ますので外出許可を頂いてもよろしいですか?
大丈夫です、全て私にお任せ下さい……。
***
翌日、王子は廃摘され国外追放。浮気相手の男爵令嬢は虐めの自作自演を認めて自ら修道院へと入ったそうです。これは噂ですが、ふたりともとても恐ろしいものでも見たかのように怯えていて、逃げるようにこの国から去っていったのだとか。
そして婚約破棄され国外追放されるはずだった私は王家から謝罪され、もちろん婚約は白紙に戻りました。
「お嬢様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう。ねぇ……あなた何をしたの?」
「そんなたいしたことなどしていませんよ?本当の事を言わないと死ぬより酷い目に合うと理解していただいただけです。……ただ、お嬢様の憂いを晴らすのは私の役目ですので少々張り切ってしまいました」
にっこりと微笑むその表情からは何も読み取れないが、やっぱりなにかしたようである。
たった一晩で状況を一変させたこの執事の正体だが、実は悪魔だったりする。
幼い頃に偶然魔方陣から呼び出してしまい契約してしまったのだが、いつか私の魂を引き取るまで私の側にいると宣言されているのだ。
なぜかこの悪魔に気に入られてしまいどうやら溺愛されているようなのだが、時々とんでもないことをやらかすのでヒヤヒヤしてしまう毎日を過ごしている。
「困った執事ね」
「お褒めに預かり光栄です」
でもまぁ今回は助けてくれたので感謝しているが……その溺愛ぶりをもう少しおさえてくれないと顔を見るたびに心臓がうるさくなってしまうなぁと、贅沢な悩みを持つはめになったのだった。
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