カミワザお見せします!

三ツ沢ひらく

プロローグ

第0話

 江戸時代から続く日本の伝統芸能。


 観客の目の前で1枚の紙から作品をつくり出すその芸の名は――


『紙切り』


 精巧な技術と客を飽きさせない話術が必要とされるその芸は、その難しさゆえに年々人口が減り、その歴史が途絶えようとしていた。


 しかしその文化は思わぬ進化を遂げる。


 時代は令和。


 感染症の流行下で同時に流行った遊びがある。


 子供の遊びと言ってしまえばそれまで。


 しかしそこには確かな熱があった。


 動画投稿サイトを中心に若者たちから爆発的な人気を集め、特に学生達の部活動で盛んに行われるようになったそれは、もはや子供だけの遊びではない。


 やり方は至極簡単。しかし極めるのは困難。


 1対1の真剣勝負。

 ルールその1、お題に沿って1枚の紙を切り出し、組み立てる。


 ルールその2、作品は技術点と芸術点で評価され、より高い点数を得た製作者が勝ち進む。


 新時代のエンターテインメントであり、なおかつ技術と発想力を戦わせる競技。


 その名も『ハイパーペーパークラフト』。


 日本の紙切り文化を受け継ぐ新たなる競技が誕生したのである。


 その競技人口は学生を中心に、全国で2万人を越えようとしていた。


 これは新競技『ハイパーペーパークラフト』の頂点を目指す小学生たちの物語である。

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