第43話43
6時間目の英語の朗読も無事終わり下校の時刻になった。
恒輝と明人は、いつも通り教室から校門まで二人きりで歩く。
そして恒輝は今朝と一変して、やはり恒輝の家庭教師が御崎だと明人に正直に言ってしまおうと気持ちが変わっていた。
御崎の家庭教師は中間テストが終わるまでの短い間だと、恒輝は簡単に考えていた。
でも、思った以上に恒輝の明人への罪悪感が膨れ上がってしまった。
恒輝は、言うタイミングを計っていた。
だがそんな中も恒輝と明人には周りの生徒からの視線が集まり、女子生徒から明人のみ声をかけられたりする。
以前恒輝は、生徒からのこの視線が鬱陶しくて仕方なくて、男子にのみにだったが睨み返していたが、馴れと言うのは怖いモノで、もう最近はどうという気にならなくなっていた。
「凄く上手かったね、朗読」
まだ校舎内の廊下で、不意に明人が横の恒輝に笑顔で言った。
「えっ……そうなのかよ?」
恒輝はツンとして前を見たままそう言ったが、言われてそれ程嫌そうでもないように明人には見えた。
「カッコ良かった。凄く…」
明人は更に、恒輝の横顔を見ながら呟いた。
「はぁ?」
そう戸惑いの声を上げた恒輝は立ち止まり、やっと明人の顔を見た。
そこに、明人も立ち止まり、たたみかけるように告げた。
「西島君、凄くカッコ良かった。俺もっと西島君が好きになったと思う」
「きゃー!」
「やだ~!ウラヤマ~!」
たまたま通りかかりそれを聞いていたミニスカ女子生徒2人が、ニヤニヤしながら恒輝と明人の横を早足で去って行く。
「はぁ……あのなぁ……彩峰……お前、こんな所で言うなって俺言ってるよな」
恒輝は目を眇めて明人を見たが、本当に怒ってる風には明人には見えなかった。
「こんな所じゃなかったらいいの?」
明人はいつものように、まるでアルファのように余裕っぽく笑って言った。
しかし、次の瞬間明人は、今朝自宅のポストに入っていた古谷からの手紙を思い出した。
明人はもう古谷とは頑として会わなかったし、スマホから電話番号もメアドも全て消していた。
それで古谷は、手紙を直に入れてきた。
手紙には、こう書いてあった。
ー西島の家庭教師、誰か知ってるのか?良かったら教えて上げるから会ってくれー
古谷が何故恒輝が家庭教師に付いて勉強してるのを知ってるのか明人は知らないが、何だかイヤな予感がして、今日も無理をして登校してきた。
勿論、恒輝の朗読も心配でもあったが。
そして今日、御崎を見る度、イヤな予感が増幅した。
(もしかして、西島君の家庭教師って、御崎か?いや……そんなはず…)
内心そう思った明人は、恒輝に対して言葉を止められなくなった。
「でも西島君、どんなに頼んでも俺と外で会ってくれないだろ?だからこんな所でしか言えないし、メールじゃ気持ちは伝わらないだろ?」
「彩峰?…」
恒輝は、いつもと様子が違い雰囲気の重く語気も強い明人に怪訝な顔をした。
そして、明人の顔を覗きこんだ。
「彩峰……お前、大丈夫か?まだ調子が悪いんじゃないのか?」
この瞬間恒輝は、明人に御崎の事を今日言うのを本当に諦めた。
「彩峰?…」
そして恒輝は、本当にいつもとちがう明人を心配した。
しかし、こんな時に…
「彩峰!修学旅行の件で話がある。ちょっと面談室に来い!」
明人の背中に、突然現れた佐々木が言ってきた。
「はぁ?」
しかし、そう返答したのは恒輝で、恒輝は、今日もう何度目か分からないが佐々木と又睨み合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます