第37話37
明人は、御崎が別人の様にイケメンに変身した事と、恒輝を呼び捨てにした事に強烈な違和感を感じた。
そして何より、御崎に対する恒輝の態度が何かソワソワしていておかしいとも感じる。
その所為で、授業が始まっても珍しく、明人は授業に集中出来なかった。
何せ元々ポジティブな質だったし、恋愛感情は初めてで…
こんなに考えたり、腹の底で感情がぐつぐつ熱く煮えるような感覚が明人には初めてだったから。
そして、今更ながら恒輝と出会って、自分の思い通りに恒輝との仲が進まない事に、自分が如何に自信過剰だったかとも思う。
実際明人は、自分の容姿や頭脳その他にそれなりの自信がかなりあった。
だから明人は恒輝もすぐ、明人を必ず好きになってくれるとかなりそこにも自信があったのだ。
明人の最初の予定では、今頃はもう明人と恒輝は恋人同士になっているはずだった。
そんな中…
一時間目は、英語だった。
授業も中盤過ぎ、佐々木が明人を当てた。
「彩峰!この問題を答えろ!」
恒輝は、その様子に窓の外の青空を見ながら心の中で佐々木に悪態を付く。
(彩峰!彩峰!彩峰!そればっか!先公が贔屓し過ぎだろうが!)
確かに、佐々木は授業中、やたら彩峰を当てる。
しかし…
明人は、机の上で頬杖をついてボーっとしたままだ。
「彩峰!問題を答えろ!」
佐々木が再び促すが、明人には届いていない。
見かねた隣の席の田北が右の人差し指で、明人の右腕をツンツンとして明人に知らせた。
「あっ?!ハイッ!えっと…すいません…ちょっと、聞き逃しました!」
明人は、珍しく慌てて立ち上がり佐々木に頭を下げた。
恒輝と佐々木は、明人らしくない姿に眉間を寄せたが…
恒輝もそれから授業所でなく、背後の明人ばかりが気になった。
一時間目がそれでも終わると…
佐々木が明人の様子を心配して近寄ろうとしたが、その前にさっと、佐々木の行動を察した恒輝が素早く先に明人の前に来た。
佐々木は、恒輝に先を越され、一瞬うっ…となって、教壇から恒輝と明人の様子を伺った。
「彩峰…体調…まだ悪いんじゃ無いか?」
恒輝が、席に座ったままの明人に心配そうに尋ねた。
まだ、明人のヒートやフェロモンが安定していないのでは無いか?と恒輝は真剣だ。
だが明人は、恒輝が真剣に心配してくれている事にドキっとし、思わず嬉しくなり、少し心が浮き上がった。
「あっ…大丈夫。ちょっとボーッとしてただけだから…」
明人は、いつもの爽やかな笑顔を浮かべた。
「あや様、大丈夫か?」
田北も声を掛けてきて、今日もミニスカ長野らの女子も明人の回りを囲み声をかけてきた。
恒輝は、女子達の囲みの外に追いやられ、田北と岡本にニヤニヤと笑いながら慰められるハメになった。
だが、明人は気持ちが浮上したのも、束の間。
自席に戻った恒輝が隣の御崎と仲が良さそうに話しているのを見て、明人の腹の底が、又ぐつぐつと熱くなり始めた。
その後も…
やはり明人の様子がおかしいので、恒輝も明人の体調が気になって仕方無かった。
化学の授業の当番で、明人がクラスメイトの男子と実験用の備品を取りに行く事になっていた時も…
恒輝は、明人の後ろをボディガードのように付いて来て、クラスメイトの男子をビビらせドン引きさせた。
その又後も何かにつけて、恒輝は明人から目を離さないので、明人はそれに喜びを感じたが…
やはり、恒輝と御崎が度々仲が良さそうにしていると、胸をムカムカとさせた。
特に御崎が、「恒輝、恒輝」と呼び捨てる声が聞こえる度に。
そして…
明人には、もう一つ、不可解な事があった。
どう見ても、恒輝は明人の体調を心配してとても優しいのに…
明人が学校の廊下などで、女子に遠くから声を掛けられ…
「彩峰君元気?彩峰君と付き合いたーい!」
と、キャッキャと挨拶のように言われると…
「いいんじゃね?あいつかわいいし」
と、恒輝がすぐ横で真顔でサラッと言ってくるのだ。
あたかも、本気で言ってるようにも聞こえる声音で。
明人は、恒輝の態度の落差に戸惑わずにはいられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます