第29話29
恒輝が御崎と家庭教師の件で合意した少し後。
帰宅した明人は自宅の客間のソファに座り、何故か向かいのそれには古谷がいた
。
古谷は、物珍しそうにキョロキョロと明人の豪邸を見回わすと感嘆した。
「明人の家、金持ちだってみんな言ってたけど、本当に凄いよ!呼んで貰えて嬉しいよ!」
しかし…
明人の表情は厳しかった。
「誤解するな…古谷…本当は家には呼びたくなかったけど、俺の家の回りをウロウロしてる奴と玄関前で話せなかっただけだ…」
古谷はそれでも、気落ちする事が無い…
それ所か、余裕で微笑んだ。
「上手く…いってないみたいだね。西島恒輝と…俺は、西島が普通のアルファだとすっかり思い込んでたから、明人ともうとっくにやっちゃって出来てるんだと思ったのに」
「何?…」
「以外だったなぁ…明人に言い寄られて落ちない奴ってこの世界にいるんだね!しかもそれが…オメガのフェロモンを感じ取れないクズアルファだったなんて…」
「古谷!西島恒輝は、俺のアルファの事だけは悪く言うな!」
明人は立ち上がり、テーブル越しにソファに座る古谷の襟元を両手でつかんで叫んだ。
古谷は、一度その言葉に呆然としたが、すぐに冷たい視線を明人に向けた。
「誰に聞いても、西島の事良く言う奴なんていないじゃん…あんなポンコツクズアルファ!」
「古谷!!!」
いつも温厚な明人が激怒する。
古谷は少し動揺したが、すぐに自分を立て直し責めるように言った。
「忘れたのか?明人。お前は西島に出会う前、自分がオメガなのに、ヒートの度にずっとアルファに性的魅力を感じないって自分の性癖に悩んでて、一回試しにオメガなら抱いてみるかって俺を抱こうとした!」
この時明人は一瞬、さっき恒輝に…
「お前、マジ悩みとか無いだろ?」と言われた事を思い出した。
「でも俺は、結局お前を抱かなかった!いや…抱けなかった!いくら悩んでいたとしても、ヒートが毎月来たとしても、やっぱり無理なんだよ!古谷、お前は俺の友達でしか無かったんだよ!お前には恋人として付き合うんだと勘違いさせた事は悪いと何度も謝って、その後俺は西島君に出会ってこの話は終わったはずだろ?」
明人は、怒りを抑え、出来るだけ諭すように努めた。
だが…
「勘違い?俺は、短い間だったけど、明人と付き合ってたと思ってるよ。それに明人、西島みたいな中途半端なアルファは止めとけ…きっと西島は色々な意味でお前にとって無駄だ。きっとお前は、オメガだけど一度オメガを抱いてみてもいいかって、又自分の性癖に散々悩む事になるだけだ!」
「もう…それは無い…だから頼む、もう
、俺の回りをうろつかないでくれ!」
「いや…きっと明人は、俺を抱きたいって…抱かせてくれって、頭を下げにくるよ…明人…最近お前、どんどんヒート抑制剤が効かなくなって薬の量増えてたじゃん…あんまり増やすと…」
その古谷の言葉に、明人は古谷から手を離し低い声で呟いた。
「帰れ!帰って、二度と俺の近くをうろつくな!」
しかし…
「明人…お前のヒートの苦しみを分かってやれるのも、お前の性癖の苦しみを知ってるのも俺だけだ。俺は、いつでもどこででもお前に抱かれてもいいようにして待ってるから!」
古谷は、そう言いニコリとしてソファを立ち帰って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます