僕は僕の前だけ笑顔を見せてくれる彼女に恋をした

ダークネスソルト

僕は弱い自分が嫌になる

 僕は多分彼女に好意を持っている。


 彼女は同じ図書委員の女の子。


 少し平均よりも低めの身長、可愛らしい黒目でいつも丸い眼鏡をかけている。艶々で思わずナデナデしたくなるような黒髪をいつも後ろに一つで結んでいる。

 胸は控えめだけど、確かにあるというのを感じられて思わず抱きしめたくなるような欲求に駆られてしまう。

 外にあまり出ないのか肌は白く、美しく、そっと優しく触りたくなる。

 化粧とかは一切してないが、肌のケアはしているようで肌にはシミ一つなくひたすらに美しい。

 基本無口で恥ずかしがり屋で人に注目されるのとかは苦手な彼女。クラスではいつも黙々と本を読んでいる。

 だけど図書委員として一緒に本の話をする時は本当に楽しそうで、嬉しそうな笑顔でたくさん語ってくれる彼女。


 丸い眼鏡の奥から、その可愛らしい黒目をキラキラに輝かせて、学校指定の制服のスカートを少し揺らしながら、体全体で本の素晴らしさを語ってくれる。


 僕はそんな彼女が多分、いや、ほぼ100%好きだと思う。


 だけど弱い僕は、もしも告白して今の関係が悪化したらなんて嫌な考えに囚われている僕は告白できずにいる。


 ・・・・・・・・・・


「ねえねえ。○○君、△△シリーズの最新作読んだ?」


 図書委員の仕事中、カウンター席で彼女は僕に話しかけてきた。

 クラスで見せる無口な彼女からは想像も出来ない活発な様子だ。

 僕はそれがたまらなく好きだ。

 因みに僕と彼女の趣味はおおむね一致している。といってもあくまでおおむねだ。僕の趣味は純度100%でライトノベル、たまにそれ以外の本も読むけどやっぱりライトノベルに戻ってしまう。

 彼女の趣味は文学小説、僕には分からない凄そうな本を読んでいる。

 だけど最近は僕の勧めでライトノベルも読み始めている。

 僕はそれがたまらなく嬉しかった。僕の色に染まっているようで絶妙な背徳感と興奮があった。


「ああ。もちろん読んださ」


「やっぱり読んでてくれた。いや~凄かったよね今回の巻は、まさかあそこで4巻の伏線が回収された上に、もう出てこないと思ってたあのキャラが出てくるなんてね」


「凄い分かる。僕はあのキャラが死んだときは驚いたかな」


「あ、分かる。超わかる。本当に驚いたよね。いや私あのキャラ好きだったから。もう読んでて思わず声がでちゃったよ。フフフ。恥ずかしい」


「大丈夫、僕も声出ちゃったから。思わず、えってね」


「ハハハ。そうか○○君も声でちゃってたか。フフフなんか私達似た者同士だね」

 不意にかけられた言葉にドキッとする。

 胸の高まりは半端じゃない。


 ドキドキのドッキッドッキだ。


「あのうすみません」

 何とも嫌なタイミングで貸し出しの人が来る。


「あ。はいすみません。今対応しますね」

 そう言って僕はサクッと対応する。

 初対面の人が来たから、彼女はさっきの様子とは打って変わって、僕の後ろに隠れるように返却された本をアルコール消毒した雑巾で丁寧に拭く。


 その手は白くて細くて強く握ったら簡単に折れてしまいそうで、凄く綺麗だった。


 何となく優しく握りたい。そしてそのまま抱きしめて頭を撫でて、その髪をほどいてキスをしたい、そんな気分になった。


「どうしたの?○○君」


「あ。いや。あっと、何でもないよ」

 不意にその可愛らしい声で話しかけられて心臓がバクっと跳ね上がってしまう。ああ、何で彼女はこんなにも可愛いのだろうか。


「そう?それならよかった。あ、それでねさっきの話の続きなんだけどね。今後の展開どうなるかなって。私はそろそろ7巻のあの伏線が回収されると思うんだよね」

 人がいなくなった途端に元気になる。僕の前だけ元気になる。

 ああ、もう本当に可愛らしい。抱きしめたい。


「確かにそういえば7巻の伏線回収してなかったね。ああ、そう考えると今回の巻ではあのキャラとあの遺跡が出てるから確かに回収されそうだね」


「でしょでしょ。そうそうなんだよ。いや~凄く次の巻が楽しみだな。フフフ」


「そうだね」


「でも。次の巻までこの作者さんの今までの巻数の発売順から逆算しておそらく4か月以上はかかるだろうな。あ~もう。本当に速く書いてよ。でもこの発売を待つっていうドキドキ感も最高に良いんだよな~」


「分かるよ。その気持ち」


「フフフ。本当に○○君とは気が合うね。フフフ」

 そうして微笑んでくれた彼女の笑顔は僕の心を破壊するには十分な威力であった。


 今すぐにでも付き合いたい。告白したい。そしてあわよくばという欲求に駆られるが、しかし臆病で弱い僕にはそれが出来ない。

 今の関係にいいと思ってしまう。今の関係が崩れるのを恐れてしまっている。

 だから今日も僕は弱い自分が嫌になる。


「どうしたの?なんか悩みでもあるの?」

 どうやら不安が顔に出てしまったようだ。

 ああ、でもこうして心配してくれる彼女も本当に可愛い。


「いや。何でもないよ」


「そう?それならいいけど。フフフ。もしも悩み事があるなら相談してね。○○君は異性の中で一番の友達で私の趣味を理解してくれる同士なんだから」


 異性の中で一番の友達・・・・・・・か。


「分かった。ありがとう」


「フフフ。どういたしまして」

 ああ。もう本当に可愛らしい笑顔だ。


 ――――――――――――


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