第26話:誓約魔法:this spring
「それで、ロイスくん。セオくんが
ソフィアは投げやりに、しかし鋭く目を光らせて問う。
「それは僕に対して喧嘩を売ってるのかな? だとしたら、そちらの方が痛い目を見ると思うけど」
ロイス父さんはにこやかに笑いながら、目を細める。
「それでも、さ。ボクはこの町の自由ギルドマスターだ。そして自由ギルドの役割は勿論わかってるよね。だから、ボクはこの場で引くわけにはいかないんだよ。たとえそれがロイスくんたちであろうと、疑いがあるのならば絶対に」
んん? ん? 何か雲行きが怪しくなってきた。あれ?
二人とも何か険悪な雰囲気を漂わせている。けれど周りの人たちは何の手出しもせず、ただ見守っている。
「ねぇ、ロイス父さん。話しても俺は良いよ」
流石に不安になって訊ねる。
別段、バレても問題はない。問題はあるにはあるが、ロイス父さんとソフィアの仲が悪くなることに比べれば、俺だけが被害を被るから問題はない。
だが、ロイス父さんは首を振る。
「いいや。セオが背負って、はいお終い、ってわけにはいかないんだよ。僕がそうしたくない。セオは僕の息子だ。家族だ」
ロイス父さんは俺を真剣に見つめてそう言った。
……、とても照れる。ただただ、嬉しくて照れる。ロイス父さんがそう思ってくれていて照れてしまう。
俺の頬が赤くなっているが、ロイス父さんは気にせず、ソフィアの方を向く。
「だから、話せないよ。少なくともセオが傷つくかもしれない未来があるなら。詳細なら言おう。獲得した理由も言おう。それくらいは良いだろう。だけど、獲得できた理由は言えないよ」
そしてきっぱりとソフィアと会議室にいるみんなに言い放った。
その一歩も引かないという姿はかっこよくて、思いやりがあって、こそばゆい。
けれど、ロイス父さんはそれから溜息を吐いた。
「……、まぁ、とは言え、それでも引いてくれはしないだろう」
「当たり前だね。エドガーくんやユリシアくんだったら引いたかもしれないけど、ラインくんやセオくんなら話は別だね。特にセオくんなんて絶対に追及しなければならない!」
ソフィアも先ほどのロイス父さんと同様に
そして、俺はソフィアが何故、ここまで言うのか分かった。
俺とライン兄さんの魂魄はまだ、一次成長が完了していないからである。
だから、おかしなことがない限り、
だから、ソフィアは引かないんだ。少し、尊敬してしまう。
俺の考えを他所に、ロイス父さんはソフィアの言い分を落ち着いて聞き、そして頷いた。
「だから、ここにいるみんなには獲得
なるほど。たぶんロイス父さんはこの妥協点を最初から目指していたんだろう。
「わかった。ボクはそれに賛成だね。さて、みんなはどうする?」
ソフィアもそれが最初から目的だったらしい。さっきの鋭く尖った顔つきから、一変して子供のような顔に戻ったのを見て、俺は何となくそう思った。
前世の姉がそんな感じで交渉してたし。
そして、ソフィアに問われたみんなは「問題ない」と頷く。
「じゃ、ロイスくん。誓約とセットで説明よろしくね」
「わかったよ」
ロイス父さん頷いて。
「――〝誓いの宣言〟」
誓約魔法の前準備を唱える。
それから、大きく息を吸って。
「ここにいる者は以下の事を誓う。
――ここにいる者はそれ以外の者にこの後に話される情報を意図的に漏らさない事。それは言葉以外の全てを含む。
――ここにいる者はセオについての味方でいること事。それは自らの大切に関わること以外のいかなる状況において。
――ここにいる者は今後、これから話されることによって起こるいかなる問題があろうとこの町のために全力を尽くす事」
それから、ロイス父さんは周りを見渡す。
「以上のそれらを誓う者は魔力を僕に」
ロイス父さんが右手を差し出してそう言うと、全員の体から色とりどりの光の玉が出てきた。
それはロイス父さんへと向かっていき、ロイス父さんが差し出す右手の上で回り始めた。
「全員の了解がとれました。では、――〝誓約の締結〟」
そしてくるくると回っていた光球たちは一瞬、蒼穹の光に包まれたかと思うと、直ぐにロイス父さんから離れ、光球が出てきた人たちの所へ戻り、身体の中に入っていった。
「これで誓約は完了したよ。もしこれを破ろうと、もしくは破れば直ぐに僕が分かる。そしたらわかるよね」
ロイス父さんは脅すようににこやかに言う。罰の条件を言わないとか鬼畜過ぎやしませんかね。
ただ、そう思ったのは俺だけらしく。
「破った瞬間、死ぬとかそういう罰でなかったことに感謝するよ」
ソフィアはそう感謝し、みんながそれに頷いた。
ロイス父さんはそれに頷いて。
「それじゃあ、セオが
説明を始めたのだった。
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