第14話 愛と呼ばれるもの
馬車は走る、どれくらい時間が経ったろうか?
夜が深く闇を塗っている。
散発的にクリーチが襲って来たが仮面達の攻撃の前に退散していった。揺れが大きくなって来た。窓を覗くと荒涼とした土地が広がっている。ジンとニーナは
方法が無ければ、と考えると私の体は
ジンがあの夜言った、私を生かす為に、という言葉が頭の中を回っている。それが暖かい焚火のように私を勇気付けている。ジンはいつも私の事を大事に思ってくれているのを感じている、上手く返せているだろうかと時々心配になる。
ニーナを思うと彼女の今までの葛藤や苦しみが脳裏に浮かび、虚無を見ているようで悲しくなった。
あれ程取り乱した事もどうしようもないほど理解出来る。
咎人、咎人、咎人、咎の無い人々がそう呼ばれ迫害されて来た歴史に
それら全てを受け止め、それでも私はニーナの事を愛しているのだと気付いた。
だからこそ簡単に死ぬ訳にはいかないのだ。
三人がこれからの新しい人生を歩む為にもこの悲しみの連鎖を私達が断ち切らなければならない。
私は立ち上がりジンとニーナの手を握った。少し驚いたように二人は顔を見合わせたがそれから笑って私の手を強く握り返した。
「難しい顔していたから声をかけずにいたけどその調子だと腹はもう決まっているようだな!」
いつもと変わらない涼しげな笑顔でジンが言う。
「もし仮面達が約束を守らずいきなり襲いかかって来たら私が全員を撃ち殺してクリーチの餌にしてあげるから安心して。
…あの夜、私の気持ちはもう決まったの。何があろうと君の味方でいるから。大いなる神は燃やしたい程憎いけれど君を殺してまで復讐したくないって思ったの。私の気持ちが。
一族を裏切る事になっても絶対に君を死なせない、私もジンも。その為には何だってやるわ。」
嬉しかった、しかし仮面の件は本当にやりかねない為、私は若干引きつった笑いを満面の笑顔のニーナに向けた。
「もう大丈夫だよ。必ず三人で生きて帰ろう。こんな悲しくて苦しい思いを僕達は強いられて来たのだから。
終わらせよう、全部終わらせるんだ。」
私達は三人でそれぞれを抱きしめた。愛はここに確かに存在していた。
ゴトゴトと馬車は走る、朝日が世界を照らす頃私達は【清め火】の村に辿り着いた。
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