第6話「金の姿勢」・リラックス。

 金の姿勢は『舟をこぐ』じゃ、これは三日月流導引の基本になる行法で、金のように貴重な行法なんじゃ。

 首と仙骨にある副交感神経を連動して動かすことで、体をリラックスさせる行法じゃ。

 一から三の型があるが、頭を深くさげて手をヘソの高さに引いて骨盤の仙腸関節を緩める下段の技。

 頭はあまり下げないで手を胸から肩の高さに引く中段の技。

 中段の技から手を頭の上にあげる上段の技がある。

 あまり型にこだわらずに自分のコリに合わせてやるといいぞ。


 自律神経には、交感神経と副交感神経があり、仕事をする昼間は緊張の交感神経が働くのじゃ、夜はリラックスさせる副交感神経が働くようになっているんじゃが、緊張が強いと夜に副交感神経が上手く働かないんじゃ。

『舟をこぐ』をすることで副交感神経が働くようになるんじゃ。


 わしは膀胱の緊張状態が続き頻尿になって、オシッコをしても1時間もすると膀胱が落ち着かなくなってな〜っ、ひどい時はオシッコをして2~3分でまたオシッコをしたりしていんじゃ。


 夜中も2時間おきにオシッコに起きて、眠りも浅かった。

 何とかならないかと試行錯誤して『舟をこぐ』をすると膀胱の緊張がほぐれることに気がついたんじゃ。


 急にオシッコがしたくなって尿道が痛くなったり、漏らしてしまうんじゃないかと思うような日々が続いていたが、『舟をこぐ』をすると、それが無くなった。

 膀胱の緊張が無くなったような感じで、オシッコのことをあまり考えないようになったんじゃ。


 加齢による膀胱の衰えがあるから、若い頃のようにはいかないが、頻尿はかなり改善された。仙骨から出ている膀胱につながる副交感神経が不調だったのかもしれんな?

 椅子に座っていても、布団に仰向けに寝ていても仙骨から出ている副交感神経は圧迫されているんじゃ。

 仙骨を手でなでるのもいいぞ。


 咳やくしゃみをすると肛門が連動して動くように、『舟をこぐ』は首と仙骨を連動させて動かすので副交感神経が働き体をリラックスさせるんじゃ。


 頻尿だけじゃなく、腸も動き出して翌日に腹がグーグー鳴っていた。

 眠りも深くなって、目覚まし時計が鳴るまで寝ておる。

 あと、晩飯の後、やたら喉が乾いて水をガブガブ飲んでいたんじゃが、喉の乾きもおさまった。

 首の上にあるホルモンの調整が良くなったのかもしれんな。


 昔から、剣道の素振りは健康に良いと言われているが、『舟をこぐ』も似たような効果が出ると思う。はらを作る行法の一つでもあるんじゃ。


「祖父、仁蔵は『舟をこぐ』について、このように申していました」


 まだまだ謎の多い行法ですが、心と体をリラックスさせるには良いようです。



【一の型】


①片足を半歩前に出して立ちます。

②頭を前に倒しながら腕を下から上へ上げ肩より少し高い所まで上げ、腰に力を入れアゴを引きながら、胸を広げるように手を引きます。

 

 渡し舟をこぐような気持ちで、体の力を抜いてゆっくりとやるといいと思います。

 片側2~3分で左右。


【二の型】


 一の型と基本は同じです。

 手を引いた時に上半身と首をねじります。


①、一の型で手を肩まで引いた時に、前に出した足と同じ方の手を肩で止めなずに、そのまま後ろに引いて上半身をねじり、首も一緒にねじります。

 左右。

②、①と同じ動きなんですが、後ろにある足の方に上半身と首をねじります。



【三の型】


①、一の型の動きで、頭を前に倒し、その時腕を上げずに下に垂らしたまま上半身をおこすと同時に肩を上げて、直立して肩をさげます。

②、①を繰り返します。肩を上げる時は緊張して、肩を下げる時に息を吐いて力を抜きます。



※1度にやり過ぎないよう、こまめにやりましょう。

 病気のある人は無理をするとかえって悪化することもあります。

 最初は少しずつやってください。

 慣れてきたら10~20分くらいやるといいです。


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