第139話 次回予告。


羽根が堕ちて、虚しい無力が掬われる。


荒波の如き多様に入り組む情勢を他所に、不器用な天使の揺り籠の中で魔女は静かに悔恨の悪夢にうなされて。


熱を帯びない冷たき滝の音が木霊する——石の牢に捕らえられたであろう龍の姫が、明日も無き眠れぬ夜を過ごすのだろうかと。


己の立ち行かない無力が、その大きな一因と。


一方で、病んだ兎も悔いていた。

守られた騎士も悔いていた。


肝心肝要な所で、何の役にも立てずに時を無為に過ごし、結局は守ろうと誓っていた者たちの重荷になってしまった事を。


だが、絶たれた可能性——各々に伸ばした手の先に生まれた感傷の虚空は、やがて渦を巻き絶望の刃を生み出すに違いない。


絶望と呼ぶに相応しき断絶された願いに対する血の滲んだ祈り。

知らぬ者には取るに足らぬなまくらも——契りを結ぶ悪魔が持てば、鋭利な爪を研ぎ澄ます至高の刃。



柄を握りて吐息を漏らせば、万命枯らす死の軍風。


舞い降りし白き羽根をも悪逆の刃と研ぎ削り、悪魔は願いを叶えるだろう、彼女らの喉を枯らした訴状を糧に。


立ち入り禁止、情状酌量、歪に張られた母子の鎖を引き千切り——血染めの罪が新たに一つ生まれ出で、またも世界を濁すのだ。



しかして努々忘れる事無かれ——今宵は戦争、


全ての罪が覆われる——たった一つの大罪の日和。



次回、断頭台のデュラハン14。



妬心としん編】



5月1日、連載開始予定。

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