第37話 因縁の顔色。2/3
一方その頃、セティスの足止めの
そこに待ち受けていたのは、
荘厳にして神聖さすら感じさせる雰囲気を漂わせる相手。
——リオネル聖教最高司祭、生ける伝説、
——レザリクス・バーティガル。
「さてと……そちらの目論見がどの程度なのか
その因縁の相手との初めての
だが軽く息を吐きながらの言葉を放った後、その瞳にレザリクスの顔を刻み込むように敵を
——イミトがこの対面、出会いすらも予想していたかと問われれば、答えは
それでも彼は平静を装い、
「分かっている。そのような堅苦しい振る舞いもしなくていい、君という人間の人となりはルーゼンビュフォア殿から話として聞き及んでいるつもりだ」
その様を見て座椅子の肘置きに頬杖を突き、先んじて敵対する相手と親しみのある関係性を構築しようとするレザリクス。
なるほど、イミトは思う。そんな表情。
「そうか……俺の方もそれなりに聞いているよ。稀代の人格者にして救国の英雄レザリクス・バーティガルの人となりはな」
互いに腹の探り合い、イミトもそれなりに波乱万丈——人間という生物の
しかしそれでも何も成し遂げぬ、たかが十八年。
齢六十は超えているだろうレザリクスが
生死が
「初めに言っとくが、ここでこの時間、アンタと会っていた事を隠すつもりは無い。騎士団の監視の邪魔をしたのは、アンタと
しかしそれでも今さら
ふとした
「——こちらも今回の和平調印式で貴殿を
そのイミトの思考をひと時の
「それに
「「……」」
イミトもまた、目の前に置かれた紅茶のティーカップを無視しつつレザリクスと沈黙の中で目と目で語り合う一幕。相手の思惑、出方——互いに牽制し合い、ピリピリと談話室の室内に緊張感を走らせて。
「と、なると……つまらないお茶会だな」
先んじて打って出たのはイミトであった。テーブルの中央に置いてあった
「……確かに、そうだな」
対するレザリクスは枯れかけた
互いに、本題を始めようと暗に示す口振りではあった。
「——……クレアは、元気にしているか? 魂が結合していると聞いたが、離れていても体に問題は無いのか?」
そうしてレザリクスが始めたのは、他愛無い世間話のようでそうではない腹を割った話だった。イミトの素性、事情を
——僅かな静寂。それはそんなレザリクスの哀愁に祈りを
「……元気も元気と言いたいが、それを聞ける資格がアンタにあるのか? 裏切り者」
イミトにとっては糾弾する物であったのかもしれない。しかし、その内情から目を逸らすように彼は目を
もはや責める気にすらなれないと言った風体。
「違いない……彼女の怒りに満ちている顔が目に浮かぶ。とはいえ、兜を纏う彼女の素顔をそう何度も見た訳では無いが……」
そんな彼に、己を
「別に怒っちゃいねぇよ。俺もアイツもな」
腹立たしい想いは無論あった。それでもイミトはレザリクスから顔を
だから腹立たしいのかもしれないと彼も、ふっと微笑むのだろう。
だから壊したくもあるのだろう。
目の前にいる男がクレアを裏切り——デュラハンの身体を奪ってまで果たそうとしている悲願、理由を全て奪い返して奪い取りたいと思うのだろう。
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