エピソード解説②/VRゲームが秘める危険性

【二作目】

 機巧探偵クロガネの事件簿2 ~VRと現実とブレイクスルー~


〈五月雨〉

 それでは『2』の解説です。

 本作はSFでは既に定番となったVRMMOを題材に取り扱った内容となっています。テーマは勿論、「VRの世界に意識が取り残され、現実世界へ帰還する方法を模索する」といった王道なものです。


〈莉緒〉

 流石にテンプレートでは味気ないため、主人公が探偵であることに着目。

 すなわち、「VRの世界に囚われてしまった未帰還者の原因究明と救出」が『2』の依頼であり導入となるわけね。


〈五月雨〉

 二作目にVRものを選んだ理由としては、探偵助手となった美優を活躍させたかったからです。彼女はガイノイドであり電子戦の専門家ですから、こと電脳空間内では主人公であるクロガネ以上の活躍が期待できると考えました。


〈莉緒〉

 実際に美優は閉じ込められたVRゲームの世界から脱出路を作ったり、『2』の真犯人を特定したりと大活躍するしね。



【プロローグ】


〈五月雨〉

 舞台となるVRゲームは剣と魔法が織りなす王道ファンタジー系にしました。

 また王道かと思うでしょうが、現実世界は近未来SFの舞台設定なので正反対のものを使いたかったのです。

 なお、作中ではVRの世界から現実に戻れなくなった者を『未帰還者』と称しています。


〈莉緒〉

 ここで『2』の舞台がファンタジー系VRゲームの世界であり、今回の敵をはっきりと明示しているわね。ファンタジーにあるまじき近代装備で固めた特殊部隊、実に解りやすい。


〈五月雨〉

 解りやすい事件の導入から、次の主人公側の導入に移ります。



【第1章】オムライスと信念


〈五月雨〉

 シリアスな依頼を受けた後、正式に助手となった美優とのやりとり。

 クロガネは探偵としての仕事をこなす傍ら、美優の教育も行っていきます。学校に通わせてみるかとか、早くも続編である『3』の伏線が出てきました。


〈莉緒〉

 亡き私からの依頼が今も継続中であるためか、彼が責任感の強い真面目な性格であることが解るわね。真奈に対しても誠実な態度を見せているし。


〈五月雨〉

 ちなみに『機巧探偵』では主人公よりもヒロインの成長を重視しています。

 これは世に出ている多くのラノベ主人公が十代の若者で、物語を通して強く成長していくという王道設定を、主役二人にそれぞれ分担させています。


〈莉緒〉

 つまり、二十代の大人であるクロガネが【決断と強さ】を、ガイノイドである美優が【人間としての成長】を担当しているわけね。


〈五月雨〉

 この設定は『機巧探偵』主役二人の基本軸であり、今後もブレずに描いていきたいと思っています。



【幕間1】


〈五月雨〉

 突然ですが、皆さんはゲームをプレイする際、主人公もしくは自分の分身であるアバターにどんな名前をつけますか?


〈莉緒〉

 本名をそのまま採用したり、好きなアニメや映画のキャラクターから借りたりと、一度は盛大に悩んだことがあると思うわ。


〈五月雨〉

 それもゲームを楽しむ一つの要素だったなと、私もその時の経験を思い出しながら今作に登場するプレイヤー達の名前を考えました。


〈莉緒〉

 そしてネーミングセンスが無い作者が盛大に恥を晒した回が、この【幕間1】だったと?


〈五月雨〉

 (´・ω・`)ショボーン……(´;ω;`)ブワッ


〈莉緒〉

 泣くなよ。



【第2章】スキルとアイデンティティー


〈五月雨〉

 2020年以降、eスポーツがオリンピック種目に選ばれ、プロのゲーマーが活躍し、ゲーム実況者が武道館ライブをするスゴイ時代がやって来ました。

 たかがゲーム、されどゲーム。

 見方が少し変わるだけで自身の価値や居場所を良くも悪くも見出せるのは面白いと思い、このエピソードを書きました。


〈莉緒〉

 さり気なく今ラノベ界でもホットな『転生者』を絡めてVRゲームの説明をしているわね。イメージしやすい例えではあったかな?

 一作目でクロガネの趣味が読書と映画鑑賞と言っていたから、きっと異世界転生もののラノベも嗜んでいるのでしょう。


〈五月雨〉

 『2』では第二ヒロインである真奈がよく絡んできます。

 彼女はシリアスにもギャグにも対応できる便利な物語進行役であるため、作者としてはかなり重宝しています。


〈莉緒〉

 小説仲間からは「都合の良い女」とか言われてたけどね。


〈五月雨〉

 合ってるけど言い方ぁ……。

 ちなみに真奈の在り方は良くも悪くも【日常】の象徴です。主役二人は出自も含め非日常側に位置するため、真奈の存在は二人にとってかけがえのないものです。


〈莉緒〉

 清水は刑事なのであえて除外するけど、日常側に居て主人公達と絡める一般人のネームドキャラって真奈しか居ないんだよね。そりゃ貴重だわ。


〈五月雨〉

 個人的に三ヒロインの中では、一番好きなヒロインですね。


〈莉緒〉

 ほう。


〈五月雨@真奈推し〉

 表社会で生きようとするクロガネの居場所になり得る一般人女性であるため、今後の展開次第では【クロガネ×真奈】ルートが確立される可能性もあります。


〈莉緒@美優推し〉

 ちょ、それは聞き捨てならんぞっ。


〈五月雨〉

 まぁ、三人の中から誰を選ぶにしても、美優は助手として常にクロガネの傍に居るでしょうから。

 何事もなければ、実質メインヒロインである美優の一人勝ちです。


〈莉緒〉

 ぃよしっ。

 ……ん? 


〈五月雨〉

 クロガネが誰と結ばれるのかは


〈莉緒〉

 おい、思わせぶりに不安を煽るのやめーや。



【幕間2】


〈五月雨〉

 【幕間1】と同様、事件の容疑者と思しき存在の視点からVRゲームの情報を俯瞰的に捉えています。

 同時に、この先の『結果だけ』を先行公開していますね。

 これは決してネタバレではなく、クロト≒クロガネ? が強くて必ず勝つのは目に見えているため、あえて結果だけを先に伝え、そこに至るまでの過程を読者様に後から追って貰うという変則的な手法を使いました。


〈莉緒〉

 サスペンス映画とかでもよく使われている手法で、「何故そんなことをしたんだ?」「動機は? 関係性は?」と真相に至るまでのドキドキ感や続きが気になる効果があるわね。


〈五月雨〉

 幕間に登場する容疑者らしき存在は機械的に要約した『結果』しか公開していないので、どのように戦ったのか、そもそもガーノって誰だよ? と、詳細はぼかした状態になっています。


〈莉緒〉

 なので、気になる人は続きを読もうっ。



【第3章】登録と決闘


〈五月雨〉

 ようやく機巧探偵が件のVRゲームの世界に足を踏み入れました。そして早速クロガネ=クロトが大立ち回りを演じています。


〈莉緒〉

 この『2』ではゲームとはいえ剣と魔法の幻想世界を舞台にしているため、クロガネは一作目で多用した拳銃や義手などの近代的な武器は使いません(使えません)。色々な意味で暗殺者らしく短剣を武器に戦うわね。


〈五月雨〉

 そして今作のゲストキャラクターであるガーノとヒメノが登場しました。

 オンラインゲームにおいて、現実では顔も名前も知らないけど一緒に冒険してくれる仲間というのは不思議とワクワクします。ガーノの視点で読み進んでいくと、また違った面白さが見えてくるかもしれません。


〈莉緒〉

 というのも、『2』ではある意味このガーノがもう一人の主人公でもあるわね。

 この時点で解るガーノの情報は、FOLのベテランプレイヤーで機巧探偵と関わってしまった一般人。今後のガーノがどうなるか注目よ。



【幕間3】


〈五月雨〉

 真奈の立ち位置が『日常』なので、危険と隣り合わせな『非日常』に飛び込む機巧探偵たちの帰りを待っています。普段がテンション高めな大人げない大人の残念美女だけに、しおらしい彼女を書くとギャップがスゴイですねw


〈莉緒〉

「誰だお前は?」とまではいかないけど、本当にシリアスな時はシリアスね。


〈五月雨〉

 今回の事件が解決したら反動でギャグに全振りしていることでしょう。


〈莉緒〉

 目に浮かぶわー。



【第4章】ゾンビと暗殺者


〈五月雨〉

 みんな大好きゾンビ討伐回。もしもFOLが超有名な某ゾンビゲームの世界観なら、クロトはハンドガン無双していることでしょう。いや、この男ならナイフ縛りでもやりかねない。


〈莉緒〉

 近接戦闘の専門家だものね。

 戦闘以外でも濃密な回よね。ゾンビ討伐。走るアシツキマグロ。ガーノとヒメノの告白。クロトの指揮。ユミの索敵と分析。走るアシツキマグロ。標的の発見と撃破。


 ……あの、アシツキマグロって何?ww


〈五月雨〉

 さぁ?www


 真面目な解説に戻りますが、クロト(クロガネ)は今回『普通』にこだわっている節があります。

 というのも、彼は『普通』とは程遠い非日常的な環境で育ったため、今は美優の成長のためにも一般常識、つまりは『普通』の認識を周囲から得ようとしているのです。


〈莉緒〉

 娘をよく理解するために最近の流行を把握しようと必死になる父親、と言えば解りやすいかな。現にガーノ達の言動がイマイチ理解できず、彼らに振り回されているわね。



【幕間4】


〈五月雨〉

 いよいよこの事件の容疑者が動き出し、物語は加速します。


〈莉緒〉

 ちなみに、例の特殊部隊風のNPCの正式名称は『ハンター』よ。

 作中の登場人物たちはそんなこと知る由もなかったから、一貫して「例のNPC」呼ばわりだったけどね。

 それでは次に行こう。



【第5章】出現と脱出


〈五月雨〉

 ついに例のNPC『ハンター』との戦闘ですが、あくまで情報収集と脱出までの時間稼ぎが目的なのでまともに戦いません。VRという敵の領域内において圧倒的な物量で押し切られてしまうのは明白だからです。

 一作目の解説にも触れましたが、主人公であるクロガネの強さはチートではなく、あくまで技術と経験と装備によって裏打ちされた軍人のようなものです。

 特殊能力はありますが現実世界ではリスクが大きい上に回数制限があるため使う場面も選んでおり、今回のVRでは同じ効果でデメリットなしのスキルも実はアテにしていません。FOLは敵のテリトリーである可能性も考え、突然スキルを封じられてしまう事態も想定しているからです。

 あくまで主人公は等身大の人間であり、その枠組みから外れないことを意識しています。


〈莉緒〉

 一方で美優は己に備わったハッキング能力をフル活用してクロガネのサポートをしているわ。メインヒロインの面目躍如ね。


〈五月雨〉

 実は『機巧探偵』で一番扱いが難しいのは美優だったりします。


〈莉緒〉

 まぁ、探偵パートや戦闘パートにおいて、高度なハッキング技術はサイバーパンクの世界ではバランスブレイカーである上に、「探偵役は美優一人で良いんじゃね?」と思わせるほど検索能力は極めて優秀だしね。

 だけど、美優が活躍できる場はネットと常時接続できるデジタルな環境に限定されるわ。FOLのようにVRゲームの世界では彼女の存在は切り札になる一方で、アナログな環境には脆弱という二面性があるの。


〈五月雨〉

 事実、依頼は現実世界で受けるものが大半を占め、物理的な意味で危険と隣り合わせな状況もあるでしょう。そうした脅威から美優を守るのがクロガネの役割であり、彼が届かないサイバー関連の領域は美優が補うという形です。


〈莉緒〉

 今更だけど、『機巧探偵』は主役が二人のバディものよ。その根幹となる設定を強く意識した内容がこの『2』の【第5章】となっているわ。


〈五月雨〉

 そして真奈が本当に良いキャラをしています。

 珍しく取り乱した主人公を落ち着かせる辺り、年上ヒロインの面目躍如です。

 また、後ろから抱き着いて心底心配してくれたりと、ここぞとばかりにヒロイン力も上げています。


〈莉緒〉

 あざとい。無意識なんだろうけどあざとい。だがそこが良い。

 私生活がだらしな過ぎなければ、きっと男にモテていたでしょうに。勿体ない。



【幕間5】


〈五月雨〉

 まさかの展開……! を意識してみた回ですね。如何だったでしょうか?

 『機巧探偵』の世界を管理するスーパーAIが犯人、というより悪用された形ですね。


〈莉緒〉

 AIが管理するディストピア、その典型的な問題点の一例でもあるわね。


〈五月雨〉

 個人的に『伏線を回収するタイミング』というものがかなり難しいです。

 回収が早すぎても遅すぎても駄目ですし、物語が一気に盛り上がる場面で仕掛ける前後の文章やこれまでの展開に違和感なく自然に落とし込めるかどうか……今も昔も試行錯誤は続きます。



【第6章】真相と真相


〈五月雨〉

 現実世界でのガーノとヒメノを交えたオフ会です。

 そしてさらりと今回の依頼人である立石と清水刑事が現れました。

 今回の清水は勤務中であるため、クロガネとの絡みは殆どありません。例え親しい間柄だとしても、互いの仕事と立場を考えて公私混同はしない。現実の社会でも至極当然で大切なことです。


〈莉緒〉

 さて、この回はガーノこと鹿野隆史がクロガネに断罪される内容となっているわね。

 依頼を受けた初日に、クロガネは未帰還者となったユーザーの個人情報を手に入れたことを憶えているかな?


〈五月雨〉

 FOLにログインする前に、彼は念入りに事前調査を行っていました。調査する側が未帰還者にならないための下準備だったわけですが、それが後になって偶然にもガーノの罪に迫ることに繋がったわけです。


〈莉緒〉

 勿論、本来の目的には何ら関係のないことだったのだけど、実はお人好しなクロト(クロガネ)はガーノ(隆史)と関わっていく中で彼をほっとけないとどこかで思ったのでしょう。

 単純に彼の罪を暴いて裁くのではなく、彼が犯行をするに至ってしまったそもそもの原因を暴く。いじめから立ち直ってほしいと思いを込めて、「罪悪感を忘れるな」≒「罪と向き合え」つまりは「現実に立ち向かえ」というエールを送ったと。


〈五月雨〉

 普通に警察に通報して引き渡しただけでは、いじめという根本的な原因を残したままになってしまいます。それでは隆史はいじめに苦しんでいる状態のまま更生という更なる苦痛を受けることになるのでは? とクロガネは考えたわけです。

 そこで隆史自身にはっきりと罪の意識を自覚させ、自分でケジメをつけるように促しました。


〈莉緒〉

 バーで別れた後、隆史が自首するのも良し。被害者たち(いじめた側)に謝るのも良し。自己責任と良心による贖罪の行動を期待して見逃したわけね。


〈五月雨〉

 これで隆史が開き直るようなクズだったら清水刑事に真相を話して警察に突き出すことも計画していました。


 ……以上のことを長々と本文にも書いていましたが、「いちいち描写が細か過ぎる上に長ぇッ!」「説教臭い話なんか面白くないッ!」という結論に至り、ばっさりカット。この場での解説になりました。


〈莉緒〉

 まぁ、長いよねw

 カットは英断だったと思うよ、うん。



【幕間6】


〈五月雨〉

 【第1章】でクロガネがわざわざ部屋の掃除をして夕飯を作ってまで真奈に頼み込んだ内容が明らかになる回です。


〈莉緒〉

 確かに依頼期間中は真奈の部屋に泊まっていたわね。


〈五月雨〉

 当初は未帰還者事件の真犯人は別に居ました。それも複数犯です。

 クロトが例のNPCと戦っている間、FOLに意識を飛ばして無防備なクロガネの寝首を掻こうと犯人たちが探偵事務所を襲撃する。未帰還者の原因は現実世界でユーザーを特殊な薬で眠らせていたからという物理的なものでした。

 しかし、探偵事務所はもぬけの殻。何故ならこの事態を想定して真奈の家に泊まり込んでいたから。この設定のみ本編に採用しています。

 そして事務所内に仕掛けた罠が作動して犯人たちは一網打尽、後から警察がやって来て御用……という感じでプロットを書いていたのですが、没にしました。


〈莉緒〉

 そのココロは?


〈五月雨〉

「VRMMOが関係ない所で事件が解決したから」です。ゲストキャラクターであるガーノとヒメノの存在も薄れてしまったのも原因でした。


〈莉緒〉

 まぁ、そうなるねw


〈五月雨〉

 そこでVRというよりサイバー要素を追加するために〈サイバーマーメイド・日乃本ナナ〉をある意味犯人役に抜擢しました。未帰還者の原因と『1』からの世界観に説得力を持たせられたと同時に、美優が活躍できる条件が揃ったこともあって良い判断だったと自画自賛しています。


〈莉緒〉

 そしてガーノには、『重騎士』に至った経緯と説得力を持たせるため「ゲームに己の価値と居場所を見出して現実逃避をしている少年」を演じて貰い、「いじめが原因で同級生を未帰還者に追いやった」という暗い設定を追加したわけだ。


〈五月雨〉

 お陰でストーリー展開に幅が出来ましたね。

 そのガーノが次の回でいじめという現実を突破、サブタイトル通りブレイクスルーする熱い展開になっています。


〈莉緒〉

 ガーノが『もう一人の主人公』と言われる所以ゆえんね。



【第7章】幻想と現実とブレイクスルー


〈五月雨〉

 唐突ですが「ゲームにおいて強大な敵、もしくは理想のラスボスって何だろう?」と考えた時、漠然と『巨大な神様を模した存在』が思い浮かびました。

 それが魔神イブリースの元となっています。


 長い上に中二病臭い話になりますが、ファンタジーの世界において人類の敵とは個人的に神だと思うのです。

 連中は気紛れや遊び感覚で試練という名の嫌がらせや災厄を人間に与えてきます。そして悪魔は神々の住まう天界から堕とされた神や天使たちが姿を変えた存在だと云われています。

 もしかすると、悪魔は理不尽な仕打ちから人間を救うために神に逆らった別の神なのでは? 実際にそういった説はありますし。

 神が辛い試練をただ一方的に与える理不尽な存在ならば、抗うための力を授けてくれる悪魔は人間と対等な存在なのではないかと。勿論、命なり魂なり授かった力に値する代償を支払わなければいけませんが、それはビジネスとして対等な取引です。

 悪魔は決して人間の味方ではありませんが、時に困難な状況を打破する力を授けてくれる不思議な存在だといえます。


 『2』のサブタイトルと被るこの【第7章】は、先述の神と悪魔と人間の関係性を落とし込みました。


 ガーノ(鹿野隆史)という『人間』に、いじめという名の試練を与えたのは彼のクラスメイトです。

 クラスメイトはガーノよりも運動神経や力が優れている『神』という立ち位置。実際、ガーノをいじめていたジェイソンは傲慢不遜な性格で、いかにも強い力を持つ神様ポジションです。


 一方で『悪魔』であるクロト(クロガネ)は、ガーノに犯した罪を忘れることを禁じました。それはある意味、一生解けない呪いでしたが、見返りとして勇気と自信という名の『力』を授けます。


 そして運命の大規模クエストにおいて、ガーノは『神』であるクラスメイトと対峙し、彼らに自身の勇気と力を示し、最後には『神』ですら手を焼く強大な敵を一撃で倒すことに成功します。


 ここまで私がガーノを『もう一人の主人公』と称してきたのは、彼が苦難に耐え続けて大きな成長を遂げた、まさに王道的な主人公そのものだからです。


〈莉緒〉

 なるほどねー。確かに最後の一撃はカッコよかったわね。


〈五月雨〉

 『2』はこのフィニッシュシーンのためだけにあったと言っても過言ではありませんw


〈莉緒〉

 ゲストなのに本編主人公ズを差し置いて出世したな、ガーノw



【幕間7】


〈五月雨〉

 大規模クエスト後日談ですね。


〈莉緒〉

 私のお父様、美優にとってはお祖父様であるご当主が登場。


〈五月雨〉

 このおじいちゃん、機巧探偵の二人と深過ぎる関係のため、今後もよく登場します。

 ゼロナンバーとか非合法な奴らを雇って暗躍している冷酷な御仁かと思いきや、好々爺でもあるため使い分けが難しいです。


〈莉緒〉

 さらりとブラボーゼロとシエラゼロが名前だけ出ているわね。


〈五月雨〉

 この二人は次回作の『3』に登場します。

 もう本当に濃い連中ばかりですね、ゼロナンバー。


〈莉緒〉

 VRを題材にした実在する小説が登場したわけだけど、これ大丈夫?


〈五月雨〉

 著者と出版社名を明記したので版権的には問題ない筈です。多分。


 ちなみに岡嶋二人先生の『クラインの壺』は、VRはおろか3Dグラフィックのゲームすらなかった1989年に刊行された『VR小説の原点』ともいうべき作品です。未読の方は是非一度は読んで貰いたいオススメの小説です。



【エピローグ】


〈五月雨〉

 いきなりですが、何となく真奈はコメディ側に居る方が落ち着きますねw


〈莉緒〉

 本当にいきなりだなw 解るけども。


〈五月雨〉

 美優が学校に通うという序盤にあった伏線の回収です。執筆当時は作者自身も忘れかけていましたよw


〈莉緒〉

 次回作である『3』は美優が編入した学園での文化祭編になるわね。

 上手いこと繋げたじゃないの。


〈五月雨〉

 どうも。

 文化祭は学園ものでいう三大イベントの一つですね。他二つは修学旅行と卒業式でしょうか。人によっては林間学校とか部活動、体育祭など意見が分かれそうですね。


〈莉緒〉

 そして、ラストに敵勢力の【パラベラム】幹部級? と思しき男が登場。

 未帰還者事件に組織が関与している台詞も出てきたわね。


〈五月雨〉

 その正体は不明ですが、何やらクロガネと関係があるようなことを匂わせて『2』は終わります。


〈莉緒〉

 ちなみにバーのマスターは機巧探偵の敵でも味方でもない中立的な立場に居るわ。

 中立だからこそ客として訪れた人間には酒や料理を提供し、話し相手にもなる。そして話の内容は決して口外しないマスターの鑑ね。


〈五月雨〉

 私の中で思い描く理想のマスターはきっとこんな感じで渋い、という勝手な解釈と偏見があるようですw


〈莉緒〉

 でもわかるw

 それじゃあ、『2』の解説はここまでかな?


〈五月雨〉

 はい、お疲れさまでした。

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