3、とりあえず、書いてみる

 書かねば修正のしようもないので。書きながら気付くこともあります。


 私はiPhoneのメモ帳に書いています。ベッドに寝転びながら 笑。

 リラックスすることは大事です。特に私は、脳裏に浮かび来た映像を文字に起こしていくタイプなので、半分夢見心地になるくらいのリラックス感が求められるのです!


 このさい、気を付けていたこと




①書く手が止まったら


 途中で書く手が止まってしまったら、その前の数段落間に書いた内容が、ゴールへの最適解ではなかったと見做し、少し戻って書き直します。

 このとき、没案の文章はメモ帳の下へとコピペして、残しておきます。このエピソードは、物語に提示するタイミングが合わなかっただけかもしれないので。




②それでも、書く手が止まったら


 2回書き直しても納得いかない場合、途中で諦めて、次のシーンへ進みます。

 ここは、第二版のさい、次のシーンとの調合性を考えて書きます。次のシーンや、その後の展開がわかっているので、書くためのヒントは多くなっているはずです。




③登場アイテムは再利用


 同じ言葉は繰り返して使わないように心がけますが、一度出したモノは、積極的に再利用します。

 理由はふたつ。


 ひとつ。読者の既存知識だから。

 新たに提示するモノは、読者にとっての未知情報。しかし、一度提示したモノは作中世界で存在していることを読者も了解しているため、既存知識として、脳内メモリーを使わずに読むことができます。


 ふたつ。伏線になるため。

 物語のキーアイテムを、その力が発揮される場面になって突如登場させては、ご都合主義に感じられます。そのため、序盤に提示しておくこと=伏線を張っておくこと が求められます。

 これと同じく、序盤に出したモノを中盤、終盤の印象的なシーンに再登場させることで、そのモノは、物語に時間的奥行きを与えてくれます。




④持たせたモノや、出した人物は最後まで


 私、現実生活にては、さっきまで持っていたはずのモノを失くす人間なのですが、小説内では、一度持たせたモノは何があってもキープ!

 持たせたモノは、地の文にて適度にその存在に触れていきます。持っているはずだが、描写がなされないので、現在地不明ということにならないように。

 まして、同じモノを二度手に取る描写を入れないように。

 場面終了まで持たせ続けるか、手離すところまで書くようにします。


 今作では、下馬して放した後の馬の存在を忘れていたので、途中で草を食む描写を入れました。

 



⑤描写は不足していないか


 物語を進めることに意識を取られるあまり、台本のト書き(人物の動き指示)になってしまうんですよ。気を抜くと。


「台詞」

「台詞」

 Aが鞄から古い葉書を取り出して、テーブルの上に置いた。Bは手を伸ばし、受け取る。

「台詞」

 Aは一口、熱いコーヒーを飲んでから、重苦しく話し出した。


というように、地の文に誰が何をしたとの事実しか現れなくなります。

 観測可能な事実ではなく、感覚の受容による感性、もしくは、登場人物の内面性を表す行為を描くように意識します。



「台詞」

「台詞」

 Aが鞄から古い葉書を取り出して、テーブルの上に置いた。古葉書には、店内の軽やかな洋楽BGMには似つかわしくない、随分な達筆で宛名がなされていた。Bは紙ナプキンで念入りに指先を拭ってから、手を伸ばし、受け取る。



 「洋楽BGM」と「達筆な宛名書きの古葉書」とがアンマッチだ、とは事実ではなく、感性に基づく判断です。

 また、Bが葉書を受け取る前に指先を拭ったとは、手の皮脂を古紙に付着させないための行為です。行動の記述ではありますが、Bには紙を扱うさいの知識があり、それに基づいた気遣いができるとの描写を含んでいます。


 説明文には、客観的な事実のみが求められ、その事実も自他を問わない再現性がなくてはいけません。

 しかし、小説は再現性のない感性の記述が求められるはずです。

(同じ条件下で、同じ出来事があったとしても、受容される感性は異なります。また、全く同じ条件を整えることすら難しいでしょうから)


 かといって、ポエティックに偏りが過ぎると、観測可能な事実を基調としたストーリーまでもが、容易な理解を阻まれるので、ほどほどに留めます。




⑥物語進行に矛盾はないか、登場人物描写に一貫性があるか


 物語の因果関係が成立しているかどうか。多少、無理があるときには、登場人物にとっての、


「今このとき、どうしても」


という必然性があるかどうか。それが共感をもって読者に受け入れられるかどうか。


 これが欠けると、ご都合主義に見えてしまいます。


 とりわけ、ストーリーが何かしらの偶然によって転換する場合は、その他のシーンでは、因果関係を厳守。登場人物たちにも作中世界でのルールを厳守させます。

 物語上の都合良い設定は、極力減らします。


 また、書き進めるうちに人物の内面性を理解してくるものですので、時折、序盤に戻っては、人物の性格や思考、行動面に修正を入れていきます。




◎まとめ


①書く手が止まったら

②それでも、書く手が止まったら

③登場アイテムは再利用

④持たせたモノや、出した人物は最後まで

⑤描写は不足していないか

⑥物語進行に矛盾はないか、登場人物描写に一貫性があるか



 手が止まったらやり直り、それでも止まったらスキップして書き進めることが重要です。自分が物語を理解さえしていれば、自ずから書けるものですから、理解できるように物語を進め、進めながら、理解を深めていきます。

 それでも、⑥が気になって手が止まる場合は、プロット自体に難があると考え、物語の構成から考え直します。

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