旅へ行こう!!

NEO

第1話 優しいドラゴン

 どこまでも広がる牧草地帯を、私は馬に乗って走っていた。

「さて、今日はどこにいこうか」

 私は頭に叩き込んである、アリゾナ王国の地図を思い返していた。

「よし、なんか変なあの町にしよう」

 私は笑みを浮かべ、北進街道をUターンして、元来た道を全速力で駆けた。

 程なく南進街道との分岐点を曲がり、いくつか村を通り過ぎ、程なく大きな村で休憩を兼ねて馬に水飲ませ、ついでに遅めの朝食を食べると、私は再び無線のトークボタンを押した。

「こちらマリー、いつも通り」

『了解』

「到着予定、三十七分」

『分かった。また近くで連絡してくれ』

「了解」

 私は馬なりに走り、牧草地帯の光景を眺めながら小さく笑みを浮かべた。

「なんだかんだいって、この辺りが一番落ち着くんだよね。王都なんてゴミゴミしていて最悪だから」

 反対方向からきた荷馬車と手でサインを出して挨拶をかわすと、私は手綱で馬に指示を出し、再び全力疾走させた。

 いく先に水車小屋が見え、その脇を全力で駆け抜け、私たちは一丸となって、目的の町を目指した。


 目的地の町、ラハトが見えてくると、私はインカムのトークボタンを押した。

「あとどのくらい?」

『もう着いているよ。いつもの店で、茶をしばいてる』

「分かった。なんか面白い事あった?」

『ないよ。街中も平和だし、金にならん』

「まあ、そうそうないよ。あと十分半くらいで着く」

 私は程なく入街審査の長い行列にぶつかった。

「あっちゃー、長いな……。時間帯が悪かったか」

 入街審査とは、本来は不審者が入り込まないよう出入り口で行われるものだが、それは大義面分で、まあ、確かに簡単な審査はするが、事実上税金を取るための『儀式』だった。

「便利なんだか不便なんだか分からないけど、ここは税金が格安だからね。この街は」

 私は苦笑して、インカムのトークボタンを押した。

「おーい、入街審査で詰まってる。もうちょっと待って」

『分かった。当たり前だよ、こんな時間じゃ。まあ、三十分以上でしょ』

「それどころじゃないと思うよ。今日はなんかやけに混んでるし、でっかい商隊で止まってる」

『そりゃ、ご愁傷様。さて、私はケーキでも追加しようかな』

「こら、私にも寄越せ」

 私は苦笑した。


 ダラダラと列は流れ、私の番になった。

 役人は馬の鞍の後ろに積んである荷物には目もくれず、身分証明証の提示だけで小銭を払うと、私は街中に入っていった。

 いつもの茶店に向かい馬を留めると、私は扉を開けて店内に入った。

「あっ、待ち合わせです」

 やってきた店員さん声を掛けながら手で制し、私はテラス席に向かって歩いていった。

「よう、元気にやってるか」

 笑顔で旅仲間というか、友人というか……まあ、そんな感じの仲のミンティアが待っていた。

「遅い!!」

 テーブルを挟んで椅子に座り、私はコーヒーと紅茶を注文を注文した。

「相変わらず、変な頼み方するね」

「いいじゃん、お金はちゃんと払うんだし」

 私は笑った。

「はいはい……。ところで、なんかどっかで大怪我したって聞いたけど、もう大丈夫なの?」

「うん、いい感じで、魔法医が治してくれたよ。もう大丈夫」

 私は笑ってみた。

 まあ、ちょっとした事故で右足をやられたのは事実で、慌てて治してもらったがまだ痛みは残っているし、無茶は禁物だった。

「そういうあんたは、ちゃんと予備弾買ったの。いっつもないっていってるけど……」

「今回はちゃんと買った。まあ、なくても剣があるから不便ではあるけど、こうして生きてる!!」

 ミーティアが笑った。

「ったく、もう……。気をつけなよ」

 私は苦笑した。


 ミーティアと適当にお喋りをしたと、店を出たら夕方になっていた。

「さて、いくか」

 私は留めておいた馬の手綱を解いて、鞍に跨がった。

「よし、どこに行こうかな……。久々に『緑竜洞』にいってみようかな。もう、グリーン・ドラゴンも復活したでしょ」

 私は腰に下げたドラゴンスレイヤーと、ホルスタに収めた拳銃を確かめた。

「では……行くぞ!!」

 私は笑い、馬を走らせ始めた。

 緑竜洞とは、グリーン・ドラゴンの群れしかいない一風変わった洞窟で、冒険者の腕試しの場として有名だった。

 私は街の門に向かい、門の税金収受箱に小銭を放り投げ、再び街道にでたのだった。

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