金木犀と老爺
金木犀と老爺
前からどんと風が僕にぶつかつて過ぎた
その先の植込みに
大きな金木犀がある事を
僕は以前から了解してゐる
芳しさは鼻のみならず
さて
そちらを見遣ると
今しも御爺さんが
くしやんくしやん
そのまま親指を電信柱に
前から風が遣つて來る
勿論風は芳しい
風は
さて僕はこの境涯を
吉と置くべきか凶と置くべきか
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