第2話

浮気の代償は必ず払わされる。しかも浮気相手が実の娘を手にかけたとなれば尚更。

「車内は暖房が程よく効いていて暖かいですし。それに...」


「それに?」


「誰かと話したかったんです。

その、なんといいますか、愚痴を聞いてもらいたかったんです」


「へぇー、愚痴ねぇ...」


正直なところ。


どんな愚痴かは分からないが

そんな負の感情に塗れた話はあまり聞きたくはなかった。いや、でも。他人の不幸は蜜の味とも言うし、少しだけ興味はあるか。


「私で良ければ聞きますよ...」


「本当ですか!?それでは、お話させていただきます...」


女はコホン、と咳払いしてから

こう続けた。


「長年、連れ添った主人に浮気されたんです」


「浮気ですか...まぁ、大概の男はやりますね...」


「浮気を擁護する立場ですか?」


「まぁ、私も大概の男の部類に入っている

と思いますね...」


「それが。浮気相手がまたいけなかったんです」


「若い女ですか?会社の部下とか?」


「若い女、の方だけ合っています」


「まぁ、男は若い子好きですからね...

肌も張りがあった方が燃えますし...」


「そうですか。その相手は当時まだ女子中学生だったんですよ...」


「へぇ...」


「それも私の足の骨を折って動けなくしてから

事に及んだんです」


「私の目の前で、旦那は嬉々として

娘の部屋で、さも楽しそうに...!!」


「え?」


突如、運転手の声のトーンが変わった。



女は尚も続けて話した。


「娘は父親に初めてを奪われたショックでおかしくなり、今、精神病院に入院しています。

毎日毎日、大量の精神安定剤を医者から処方され飲んでいます。

母親の方は...。マンションの屋上から飛び降り

亡くなりました」


「さて。問題です」


「その旦那は今、何処で何をしているのでしょうか?」


タクシー運転手は何も答えなかった。


「もしかして....」


運転手がごくりと唾を飲み込み、

額から冷や汗の様なものを垂らし、

目を見開きながら背後を振り返った。


女の顔をマジマジと見ようと思った

その時だった。

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