第2話 月と彼
彼は月を見ているという他はなにをするわけでもなく、ただ佇んでいた。
年齢は同じくらいだとおもわれる。
少し長めの上着のポケットに手を突っ込みながら飄々と月を眺めながら横顔は少し笑っている様にみえた。
僕は声をかけるなどという勇気がある訳もなく、しばらく横顔に見惚れていたのだが不意に彼はコチラに気が付いたらしく一瞬身構えるのが雰囲気で解った。
ただ、コチラを確認すると何かを納得したように頷いてふたたび飄々と月へと視線を移した。
これには、流石に僕も少し動揺したが、それ以上に興味を惹かれた。
とはいえ、ならばこちらからと声をかける程の社交性は皆無であり、むしろマイナスではないかと最近疑っているので仕方なくまた彼の横顔を月を交互に観察する。
しばらく、そうしているうちに途端に自分のしている事の滑稽さに思い至ると同時に羞恥心と空腹感を感じた。
そうだ、何か食べれる物を買いに行こう。
夜中に出歩きあまつさえ、買い食いをするなど不良のやることだとも思えたが背に腹は替えられぬ。
とは表面上の理由付けで深層心理では自らの愚行に対する羞恥心をなんとか目先の欲求で誤魔化そうという姑息な心理が動いた事にはその時は気が付かなかった。
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